AI革命は「学歴社会」を崩壊させ、東大卒さえ不要に?

拙著、『知性を磨く』(光文社新書)では、21世紀には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という7つのレベルの知性を垂直統合した人材が、「21世紀の変革リーダー」として活躍することを述べた。この第47回の講義では、「ビジョン」に焦点を当て、新著、『東大生となった君へ―真のエリートへの道』(光文社新書)において述べたテーマを取り上げよう。

論理思考力と知識修得力の人材が淘汰される人工知能革命

 前回は、想像を超える速さで能力を高めている人工知能が、これまで我々が身につけてきた「基礎的能力」(集中力と持続力)、さらには、「学歴的能力」(論理思考力と知識修得力)の大半を代替するようになることを述べた。

 そのことに、読者の多くは、強い危機感を覚えるだろうが、実は、このことは、人工知能革命がもたらす衝撃の、まだ序幕にすぎない。

 なぜなら、人工知能の能力は、さらに、人間が持つ極めて高度な能力をも凌駕しつつあるからだ。

 それが、人工知能の第四の強み、「分析力」と「直観力」だ。

 筆者は、1987年に、米国に本拠を置く世界最大の技術系シンクタンク、「バテル記念研究所」に客員研究員として着任したが、当時は、人工知能技術の第2次ブームであった。そのため、筆者も、人工知能を活用した技術開発プロジェクトに参画していたが、当時の人工知能は、「推論エンジン」という技術のレベルであり、まだ、人間の能力には遥かに及ばないレベルであった。「論理思考力」についても、まだ、人間にはかなわない部分が多々あり、「直観判断力」については、全く人間にかなわない状況であった。

 しかし、それから30年余りの歳月を経て、急速に進歩した人工知能技術は、いまでは、「論理思考力」はもとより、人間の「直観判断力」の基本的な部分をも凌駕しつつある。

 その背景には、「ディープ・ラーニング」と呼ばれる「深層学習」の技術の実用化があるが、この技術と「ビッグ・データ」と呼ばれる大量のデータの処理技術を組み合わせることによって、現在の人工知能は、人間の「直観」や「勘」に相当する能力を発揮できるようになっている