「明日やろう」「新年度から始めよう」「締切が近づいたら手をつけよう」……私たちが、普段の生活や仕事の中でついやってしまうのが「先延ばし」だ。この悪癖は、私たちの成功を阻む大きな要因のひとつでもある。そんな人生の大敵であり、私たちの自己実現を阻む「先延ばし」について語った不朽の成功バイブル『DOING IT NOW』がついに日本で邦訳される。今回は、その邦訳版である『DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい』から、「先延ばし」を打開するノウハウを紹介していく。

大きな課題は「紙」の上で細分化する

エドウィン・ブリス
アメリカの元経営コンサルタント。それ以前に新聞記者、編集者、上院議員秘書、ロビイストを経験。先延ばし癖と時間管理に関するセミナーを全米各地で開催して好評を博した。哲学、文学、歴史、心理学に造詣が深い。著書に『DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい』(ダイヤモンド社)などがある。現在、引退してカリフォルニア州で暮らす。

 先延ばしを解決する1つの方法は細分化です。大きな課題に圧倒されそうになったら、紙の上でじっくり考えてください。課題の達成までに必要なすべての段階を時系列でリストアップしましょう。全体のプロセスを細分化すればするほど効果的です。

 私はこのやり方を「サラミ・スライス方式」と呼んでいます。いきなり大きな課題に取りかかろうとするのは、サラミソーセージにかぶりつくようなものです。サラミソーセージはそのままでは大きすぎて食べにくいですが、薄くスライスすれば、食べごろの大きさになります。すると、自然と食欲がわき、一口食べるともう一口食べたくなり、さらにもう一口……と、次々に平らげてしまうことでしょう。

 大きな課題を細分化するのも、それと似ています。どんなに大きな課題でも、それをいくつかの段階に細分化し、順にこなしていけば難なく処理できるというわけです。老子は「千里の道も一歩から」という格言を残していますが、進みたい方向を正確に把握していなければ、どうしようもありません。大きな課題を細分化したリストがあれば、第一歩、第二歩、第三歩がどうあるべきかを具体的に把握できます。これは、目的地までの地図を手にしているようなものです。一歩ずつ順を追って進んでいくことで勢いがつき、どんどん目的に近づいていけるのです。

 たとえば、上司への提案を先延ばしにしている例で考えてみましょう。これを単純に、「上司と向き合って提案し、結果を見きわめるだけ」だと思うなら、そうすればいいでしょう。しかし、それを先延ばしにしているのなら、とるべき一連の行動を紙の上で細分化する必要があります。それはこんなふうになるかもしれません。

(1)事実関係を確認するためにファイルをチェックする
(2)提案の概要をつくる
(3)それを心の中で予行演習する
(4)予想される反論を明確にする
(5)それぞれの反論への返答を準備する
(6)提案の時間をつくる
(7)実際に上司に提案する

 ほとんどの人は、これらを頭の中で大まかに考える程度ですが、紙の上でリスト化することでより明確になり、先延ばしにしてきた課題に取りかかる意欲もわいてきます。また、リストの作成は別の目的も果たします。課題を中断しても、どこから作業を再開したらいいかが正確にわかるため、再開時の心理的な壁がなくなります。次に何をすべきかを忘れるおそれもないでしょう。