「明日やろう」「新年度から始めよう」「締切が近づいたら手をつけよう」……私たちが、普段の生活や仕事の中でついやってしまうのが「先延ばし」だ。この悪癖は、私たちの成功を阻む大きな要因のひとつでもある。そんな人生の大敵であり、私たちの自己実現を阻む「先延ばし」について語った不朽の成功バイブル『DOING IT NOW』がついに日本で邦訳される。今回は、その邦訳版である『DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい』から、「先延ばし」を打開するノウハウを紹介していく。

「慢性疲労」がやる気を奪う

エドウィン・ブリス
アメリカの元経営コンサルタント。それ以前に新聞記者、編集者、上院議員秘書、ロビイストを経験。先延ばし癖と時間管理に関するセミナーを全米各地で開催して好評を博した。哲学、文学、歴史、心理学に造詣が深い。著書に『DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい』(ダイヤモンド社)などがある。現在、引退してカリフォルニア州で暮らす。

 自分が何をすべきかを明確にし、それをやろうと決意しても、肉体的に疲れていると先延ばしにしやすくなります。実際、疲労は先延ばしの最もよくある原因の1つです。

 通常の疲労はごく自然なことで、たいていすぐに治まります。休養をとって体力が回復すると、再びエネルギーが充満するからです。しかし、「慢性疲労」はとてもやっかいです。適切に対処しなければ、何かを成し遂げるための意欲を喪失するおそれがあります。

 慢性疲労を防ぐには、勤務中にも体を動かす必要があります。特に座ったまま仕事をする人は、勤務中の運動量が少なすぎるために疲労を感じやすくなります。本来、人間は1日に8時間連続でデスクワークをするようにはできていません。長時間ずっと座ったままでいると、血液が手足の筋肉に停滞しやすくなり、その結果、眠気や疲労を感じるのです。そして、面倒な課題に直面すると先延ばしにしがちになります。

ときには立ったまま仕事をする

 疲労を軽減するためには、座っている時間と立っている時間を交互に混ぜるといいでしょう。仕事の大半は、少なくともときおり立った状態でできます。立ったまま電話をする習慣を身につけるのも一案です。ひじの高さぐらいの立ち机を用意し、そこで一時的に仕事をするのもいいでしょう。多くの企業のエグゼクティブたちも立ち机を採用しています。

 もちろん、長時間立ちっぱなしでいるのも疲労につながりやすいので、立ち机のそばには高い椅子を用意するといいでしょう。あるいは、足をかける横木か土台を用意し、立った状態で片足を乗せましょう。体重を移動させると疲労を軽減できます(昔の立ち飲みサロンには足元に真鍮の横木が備え付けられていましたが、それは単なる装飾のためだけではありませんでした)。

 イギリスのヘンリー2世(在位期間:1154~1189年)も立ち机を利用していました。彼はいつも活力にあふれ、すぐれた実務能力と統治能力を兼ね備えた人物として知られています。ちなみに、トーマス・ジェファーソン(アメリカ第3代大統領)が設計した立ち机は、彼が独立宣言を起草するときに使っていたもので、首都ワシントンの国務省に展示されています。