「明日やろう」「新年度から始めよう」「締切が近づいたら手をつけよう」……私たちが、普段の生活や仕事の中でついやってしまうのが「先延ばし」だ。この悪癖は、私たちの成功を阻む大きな要因のひとつでもある。そんな人生の大敵であり、私たちの自己実現を阻む「先延ばし」について語った不朽の成功バイブル『DOING IT NOW』がついに日本で邦訳される。今回は、その邦訳版である『DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい』から、「先延ばし」を打開するノウハウを紹介していく。

「熟考」と「先延ばし」は別物

エドウィン・ブリス
アメリカの元経営コンサルタント。それ以前に新聞記者、編集者、上院議員秘書、ロビイストを経験。先延ばし癖と時間管理に関するセミナーを全米各地で開催して好評を博した。哲学、文学、歴史、心理学に造詣が深い。著書に『DO IT NOW いいから、今すぐやりなさい』(ダイヤモンド社)などがある。現在、引退してカリフォルニア州で暮らす。

 課題をやり遂げる不屈の精神と同じくらい大切なのは、どの課題に取り組むかを素早く決定することです。成果をあげるには、さまざまな可能性を考慮して迷うのではなく、迅速に意思決定しなければなりません。「優柔不断」は先延ばしの1つのパターンですが、これは単なる習慣ですから改めることができます。あまり長く考えず、メリットとデメリットを比較検討して素早く意思決定をし、それを迅速に実行に移すようにしましょう。

 自己啓発の大家ナポレオン・ヒルは、成功した人としなかった人の仕事の習慣と心の姿勢を20年にわたって研究し、こんなふうに言っています。

「巨万の富を築いた数百人の成功者を分析したところ、どの人も素早く決定をくだし、必要に応じてゆっくりと決定を変更する習慣を持っていることがわかった。一方、資産を築けなかった人は、例外なく優柔不断で、たとえ決定をくだしても、ゆっくりと決定をくだし、すぐにその決定を変更する習慣を持っていた」

 とはいえ、誰もがこの指摘に全面的に賛成しているわけではありません。有名な経営学者のピーター・ドラッカーはこう言っています。

私が観察してきた一流のエグゼクティブたちの中には、素早く決定をくだす人とかなりゆっくり決定をくだす人がいた」

 ただし、情報を慎重に検証してゆっくり決定をくだすことは、基本的な情報がそろっているのにグズグズするのとは異なります。ほかの人たちにも影響を与える重大な決定であれば、必要なだけ時間をかけて検討してください。「熟考」と「先延ばし」はまったく別物です。

 しかし、たとえばパーティーの開催日を来週末かその次の週末のどちらにするか、参加者にローストビーフかステーキのどちらをふるまうか、規模は大人数か少人数のどちらにするか、といった日常的な事柄に関しては、適切な情報をもとに素早く決定をくだし、それをすぐに実行すべきです。まずは、こうした身近なことから、自身の先延ばし癖を改めていきましょう。