パートナーに不満が募り、つい強い言葉でののしってしまう夫婦ゲンカ。しかし、激しいいさかいを子どもの前で繰り広げることは、DV(ドメスティック・バイオレンス)にあたるとされて問題になっている。「面前DV」とも呼ばれるこの行為は、子どもの脳と成長にどのような悪影響を与えるのだろうか。(清談社 真島加代)

児童虐待防止法でも
虐待とみなされる「面前DV」

子供に対する面前DVが問題になっている子どもに対して暴言を吐いたり暴力を振るうことは論外だが、子どもの面前でパートナーを罵倒したり殴ったりしても、子どもの脳は深刻なダメージを受けてしまう

「両親間の身体的なDVを見たり、激しい口論を子どもが聞いてしまうことも、子どもに対する『心理的虐待』とされ、別名『面前DV』と呼ばれています」

 そう話すのは、『子どもの脳を傷つける親たち』(NHK出版)著者で福井大学子どものこころの発達研究センター教授の友田明美氏だ。

友田氏は「虐待」という言葉の代わりに「マルトリートメント」という単語を使用している。「mal(悪い)」に「treatment(扱い)」が複合されたこの語は、「不適切な養育」と訳される。近年では「マルトリートメント」の認知度も上がり、前述の面前DVは、“精神的マルトリートメント”に分類されるという。

「子どもを罵倒したり、その存在を否定することは、精神的マルトリートメントの代表例ですが、家庭内で親の激しいケンカを見聞きするといった面前DVを受けている子どもも、少なくありません。直接子どもに危害を与えているわけではないので、親側に自覚がないのが特徴ですね」

 友田氏の著書内でも触れられているが、2004年に改正された児童虐待防止法にも「児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者〈婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあるものを含む〉の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう)」という一文がつづられている。要するに、子どもの前でのDVや罵り合いの夫婦ゲンカは、児童虐待に該当するのだ。

「DV被害に関する相談は女性から受けることが圧倒的に多いのですが、彼女たちから『自分にはひどい夫でも、子どもにはよい父親だ』という発言をよく耳にします。しかし、家庭内で暴言や暴力を子どもが見てしまっている時点で、“いい父親”であるはずがないんです」