OPEC(石油輸出国機構)は6月22日に定例総会を開催して、7月から2017年1月より続く協調減産を緩和し、小幅増産を行うことを決定した。

 増産に関して加盟国の賛否が分かれたため、声明文には増産規模などの詳細は明記されなかったとみられる。23日に開催されたOPEC加盟国と非OPEC産油国との合同閣僚会合でもこの方針が了承された。

 名目上は、100万バレル(世界需要の1%程度)の増産だが、余剰生産能力がなく増産に対応できない産油国もあるため、実際の供給増は60万~80万バレル程度にとどまるとの見方が多いようだ。

 OPECについては、16年11月に合意した120万バレルの減産合意に回帰して、5月に152%と過剰になっていた減産の順守率を7月から100%に落とす方針のようだ。

 増産が小幅にとどまるとの見方から6月22日の原油相場は、欧州産のブレントが前日比2.50ドル高の75.55ドル、米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が3.04ドル高の68.58ドルと大幅に上昇した。

 もっとも、「各国への増産幅はまだ決めていない」(クウェート)、「各国への配分は厳密なものにはならない」(サウジアラビア)といった声からすると、産油量回復が難しいベネズエラなどの減産分をサウジが補って増産したりするなどして、増産幅が100万バレルに近づく可能性もあるのが現状と思われる。

 5月25日に、サウジとロシアが減産緩和(=増産)をめぐって協議したと報道されてから、原油市場では減産緩和が織り込まれ、相場は下落した。

 しかし、サウジとロシアが増産に前向きな一方で、イラン、イラク、アルジェリアなどは増産に慎重な姿勢を示した。全会一致を必要とするOPECの合意がなされない事態に陥る可能性があるとの見方も出ていた。だが、6月21日には、イランが小幅増産を容認する姿勢を示したと報じられ、再び増産観測が強まっていた。

 当面の原油市場は、実際の増産がどの程度になるかを見極める動きになろう。シェールオイルの増産ペース、減少が続くベネズエラの産油量、米国の制裁によるイラン産原油の供給減少の程度なども相場の材料となる。米中の「貿易戦争」といった、影響の大きな外部要因の行方も不透明だ。

 原油相場の大きな方向感を決めるのは需給動向。世界の石油在庫は、産油国の協調減産を受けて減少傾向で推移し、需給の引き締まりを示していた。今後、在庫の減少には歯止めがかかるが、需給緩和感は生じず、相場は高止まりする展開が予想される。

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)