ABEJAの岡田陽介社長(左)とNTTぷららの板東浩二社長(右)AIは驚くような機能を発揮する一方、人間にしかできないこともある。これを踏まえれば、AIでどんな未来が描けるのかが見えてくる

NTTぷらら・板東浩二社長と“エッジがきいた人たち”との対談連載、今回は国内におけるディープラーニングのパイオニア企業である「ABEJA」の岡田陽介社長に話を聞いた。小売・流通業、製造業等に続々、AIを導入する同社。岡田氏に「AIで今後メディアはどう変わっていくか」を予想してもらった。

すでにAIを活用した
様々なサービスが世に出ている

板東 世間では「AIは近いうちに人間の能力を超える」「AIによって人間の仕事がなくなる」といったイメージで語られていますね。これは、本当ですか?

岡田 既に一部、人間の能力を超えていると思います。ただし、人間の仕事がなくなることはなく、むしろAIは人間の強い味方です。さらに、SF映画のように人間を攻撃することもありません。

板東 AIの仕組みからお教えください。

岡田 AIは「ディープラーニング(深層学習:コンピューターが物事を理解するための学習方法の1つ)」の出現により、一気に進化しました。簡単に言えば、コンピューターにリンゴの画像を見せ続けると「リンゴならではのいびつな感じ」とか「拡大していくと表面に粒のような模様がある」といった、リンゴの画像に共通して現れる特徴を把握していきます。すると、画像を見せたとき「これはリンゴである可能性が高い」と人間の直感に似たものを持つようになり、最終的には人間より速く正確に「これはリンゴ」「これはリンゴじゃない」と判断できるようになるんですね。

板東 もう世の中の役に立っていますか?

AI導入で近未来のメディアとコンテンツはこんなに便利になる岡田陽介(おかだ・ようすけ)/株式会社ABEJA代表取締役社長 CEO 兼 CTO。1988年、愛知県生まれ。10歳からプログラミングを開始し、高校在学時、コンピューターグラフィックスを専攻し文部科学大臣賞を受賞。ITベンチャー企業に入社後、シリコンバレーに滞在。帰国後、ディープラーニングをコア技術としたAIを扱うベンチャー企業・株式会社ABEJAを起業、以来現職

岡田 例えばFacebookに私が友人と一緒に写った写真を投稿すると、コンピューターに「これは〇〇さんではないですか?投稿した写真に〇〇さんをタグ付けしますか?」と聞かれることがあります。これは、AIによる画像解析技術が活用されています。それまでに○○さんが投稿した写真から「これが○○さんの特徴」と把握しているんです。現在は動画からも特徴を抽出できます。

 音声からも特徴を抽出できます。例えばスマートフォンの「Google Maps」に「池袋何の何の何…」と住所を話すと、おおむね言った通りに変換してくれます。周波数は1本の線で表されます。AIは、アナウンサーの方が話す「いけぶくろ」、外国人の方が話す「いけぶくろ」、雑踏の中のうるさい場所で方言がある人が話した「いけぶくろ」など、様々な「いけぶくろ」の特徴をつかみ「こう聞こえたら『いけぶくろ』と言っているよね」と判断しているんです。

 また、データからも学べます。以前はコンビニの店長さんが30分も1時間もかけて「この時期は豆腐が売れるから、木綿が何丁で、絹が何丁」などと注文していました。しかし販売データをAIに学ばせると「この曜日はお弁当がよく売れる」といった特徴を抽出し、発注作業がボタン一押しになるんです。