とある有名な企業は、買収先に現場が汚い会社を選ぶという。なぜなら、改善の余地があるからです。この真意は、勉強にも通じるのではないでしょうか。勉強があまり得意じゃない子でも、環境を変えていくことで勉強ができる子に変わるといったわかりやすい一例です。
46年間、教育一筋――都立中高一貫校合格者シェア52%で業界1位、都立高合格者数1位を獲得した東京都随一の学習塾「ena」の学院長である河端真一氏の最新刊『3万人を教えてわかった 頭のいい子は「習慣」で育つ』がいよいよ発売。結果を出すことで証明してきた、その教え方・学ばせ方は、まさに、最強にして最高の子育て論であり、塾教師としての立場でできることではなく、家庭にいる保護者ができることをまとめたのが本書です。
本連載では、子どもたちにとって貴重な時間を保護者としてどう接するか、保護者の対応次第で子は変わるということを実感していただき、今すぐできることを生活に取り入れてください。この夏休みからぜひ取り組んでほしいことを、本書から一部抜粋し、やさしく解説していきます。

ノートがきれいな子=成績がいい子の因果関係とは?

 ノートがきれいな子とそうでない子、どちらの成績がいいでしょうか。

 ノートは勉強した内容をまとめるためのものですから、字がきれいかどうかなんて、本質的にはどちらでもいいことです。書いてある字が汚くて、まとめ方が雑だったとしても、テストで点数を取れる子は取れます。

 しかし実際には、特に小学生のうちは、ノートがきれいな子=成績がいい子という相関関係があります。

 それはなぜでしょうか。

 ノートをきれいにまとめることは、塗り絵を完成させていくような楽しい行為です。楽しいと感じながらノートをまとめていると、やがて勉強すること自体も楽しくなります。楽しんで勉強していれば成績は自ずと上がる、というわけです。

 本質的な部分にたどり着くために、非本質的な部分からアプローチする。つまり「かたちから入る」ことは、勉強をする側にも教える側にも、取り組みやすく効果的な手法なのです。

 たとえば、勉強机。あなたの子どもが勉強するときに、机の上はどのような状態になっているでしょうか。

 机の上に勉強と関係のないものが置かれていないでしょうか。置かれているなら、ふとした瞬間にそこに目が行ってしまいます。それが集中力を邪魔します。

「明窓浄机」(明るい窓ときれいな机)という言葉がある通り、勉強する際には、勉強に適した環境を構築する必要があるのです。

 勉強とは関係のないものをすべて押入れなど意識の届かないところにしまい、できるだけ作業をする場所を広く取る。そして、机の上は参考書やノート、筆記用具などこれからやる勉強に必要なものだけを出した状態にする。そうすることで集中して勉強に打ち込むことができるわけです。

 筆箱についても同じことがいえます。長年の教師経験から、筆箱の中身とその子の成績には相関関係があると感じています。

 筆箱のなかにある鉛筆の芯はどれも丸まって、短くなったものばかり、消しゴムも真っ黒に汚れていて、消しカスやら何やらゴミがたくさん詰まっている……。そんな筆箱を持っている子の成績は、たいていよくありません。

 反対に、筆箱のなかがきれいに整理整頓され、とがった鉛筆がそろっている子は、成績がいいことが多いのです。優秀な大工さんの道具箱のなかが整理されているのと同じです。

 飲食店を思い浮かべればわかると思います。

 たとえば、一流のお寿司屋さんは、隅々まで掃除が行き届いていますよね。お客さんに美味しいと感じてもらうためには、寿司の味だけでなく店内の清潔さにも気を配る必要があるからです。だからまず、寿司を握る前に店内をきれいな状態にする必要があるのです。

 飲食店に限らず、どんな仕事でも一緒ですね。製造業の多くは、「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・躾)などのスローガンを掲げて、現場をきれいな状態に保つことを心がけています。

 整理整頓して準備を整えてから作業にあたることで、効率的な作業ができるうえ、従業員のやる気やモラルを高めることにもつながるのです。

 余談ですが、世界的なモーターメーカーである日本電産では、買収先を検討するときに現場が汚い会社を選ぶそうです。

 製造業にとって現場がきれいであることは当たり前です。それなのに現場が汚いということは、改善の余地が大きいということ。現場が汚い会社は、管理方法を見直すだけで、儲かる会社に生まれ変わることができるというわけです。

 子どもも同様です。机の上や引き出しのなか、筆箱のなかが乱雑になっていて、成績があまりよくないという子は、それだけ伸び代があるということです。まず、身の回りの整理整頓を始めるだけで、学力が大きく向上する可能性があります。

 ただし、気をつけなければならないのは、ごく一部に例外もあるということです。

 部屋のなかも机の上も汚く、引き出しのなかはグチャグチャで、服装にも無頓着。でも勉強は異常にできる。アインシュタインのような、社会性の欠如した天才タイプの子が成績の最上位クラスには必ずいます。

 そういう子に、無理やり机の上を整理整頓させたりすると逆効果になることがあるので注意が必要です。

 でもそんなタイプは、本当にごく一部です。ほとんどの子は基本通りに「明窓浄机」から入るのが賢明です。

【POINT】
ノートがきれいな子、整理整頓ができる子などには、
成績がいい子が多い。

<参考文献>
勉強ができる・できないは、遺伝や才能ではなく○○で決まる。