2019年4月に罰則つき残業規制がスタートすることもあり、「働き方改革」は喫緊の課題となっている。そんななか、プレッシャーが増しているのがプレイングマネジャー。個人目標とチーム目標を課せられるうえに、上層部からは「残業削減」を求められ、現場からは「仕事は増えてるのに…」と反発を受ける。そこで、1000社を超える企業で「残業削減」「残業ゼロ」を実現してきた小室淑恵さんに『プレイングマネジャー「残業ゼロ」の仕事術』をまとめていただいた。本連載では、本書のなかから、プレイングマネジャーが、自分もチームも疲弊せずに成果をあげるノウハウをお伝えしていく。

やみくもに「効率化」しても「長時間労働」から抜け出せない理由。

「増やしたい仕事」と「減らしたい仕事」を明確にする

「働き方」を変えて、「残業削減」「残業ゼロ」を実現したいーー。

 その願いを実現するために、やみくもに「業務のムダとり」「業務の効率化」に走るのは間違いです。大切なのは「生産性」を高めることなのです。
「生産性」とは、「投入した資源(人・モノ・金・時間)」を分母に、「得られた成果(仕事の結果)」を分子にした分数によって計算されますから、生産性を向上させるためには、「分母=投入した資源」を最小化するとともに、「分子=得られた成果」を最大化する必要があります(下図参照)。

やみくもに「効率化」しても「長時間労働」から抜け出せない理由。

  つまり、「仕事のムダ取り」によって「分母」を圧縮するのはいいのですが、その結果、「分子」まで小さくなるようであれば、生産性は悪化する可能性があるということです。そして、生産性が悪化すれば、必然的に長時間労働を強いられる結果を招くのです。

 では、プレイングマネジャーが「分子=仕事の成果」を最大化するために最も大切なことは何でしょうか?

  ここで大切にしなければならないのが、「自分がめざすべき働き方」のイメージです。連載第3回でご説明したように、プレイングマネジャーが生産性を高めるためには、「マネジャーとしての仕事」を増やすために、「プレイヤーとしての仕事」を減らす必要があります。そこで、下図のように、マネジメントに軸足を置く「働き方」をイメージするのです。

やみくもに「効率化」しても「長時間労働」から抜け出せない理由。

 そのうえで、現在の働き方を「見える化」することによって、実際に「マネジャーとしての仕事」と「プレイヤーとしての仕事」にどのくらいの割合を使っているかを把握するとともに、理想とのギャップを明確にします。そして、「マネジャーとしての仕事」を増やすために、いかに「プレイヤーとしての仕事」を減らすかを考えるのです。

 つまり、「働き方改革」を進めるためには、やみくもに「業務のムダ取り」「業務の効率化」をめざすのではなく、「増やしたい仕事」と「減らしたい仕事」を明確にすることが出発点になるのです。そして、「増やしたい仕事」を増やすために、「減らしたい仕事」を減らすという意識をしっかりともつ必要があるのです。