都内中心部を歩いていて、クレーンを見かけない日はない。2年後に迫った東京五輪と無関係であっても、ビルの建替えや市街地の再開発が進んでいる。都区部を中心に市街地再開発事業の現場を追った。都市機能の更新という意味で、「再開発は買い」である。すっかり付きものとなったタワマンに住むのでなくても、周辺地域が活性化されるからである。

駅前再開発タワマン第1号の建設が進む「武蔵小山」(東京・品川区)

 3年前、東急目黒線「武蔵小山」を出てすぐのところには、焼き鳥で一杯という立ち飲み客でぎっしりの鳥勇があった。その先には、豚星や晩杯屋など人気店が潜む「りゅえる」(フランス語で小路)という名の、新宿ゴールデン街めいた飲み屋街があった。千円札一枚でそれなりに酔える「センベロ」の街。料飲街が充実した街には根強い人気がある。

 今、駅前に出ると、そこは「武蔵小山パルム駅前地区」41階建てタワーマンションの建設現場で、750台の駐輪場も設置される。隣の「武蔵小山駅前通り地区」でも同じ階数の建設工事が進んでいる。酔客には突然の出来事だったが、準備組合ができたのはそれぞれ07年と05年のことで、どちらも都市計画決定が出た2~3年後に解体工事を始めている。

「りゅえる」という飲食店街があった「武蔵小山」駅前。左手では住友の、右手では三井のタワマン建設が進む。左手奥には三井の10年前に竣工した19階建てが見える
上/遠目には副都心のオフィスビル街に見える「武蔵小杉」。左側の2棟以外はタワマン
下/ 2019年4月開校に向け建設が進む川崎市立小杉小学校(日本医科大新丸子キャンパス跡地)。近くにはさらに2棟のタワマンも計画されている

 工事現場に接するアーケード商店街「武蔵小山パルム」のある小山3丁目でも再開発準備組合が2つ立ち上がっている。ここにもタワマンができると、都合4棟が軒を競うことになる。

 ムサコと呼ばれる武蔵小山は、品川区にとっては西の玄関にして荏原地区の中心となる。この地区内には商店街が有名な「戸越銀座」や昭和大学病院がランドマークの「旗の台」といった街もある。

 東急目黒線は「日吉」から東横線のバイパスのように分岐して「目黒」に向かう。その途中にあるのがタワマンで名を馳せている「武蔵小杉」、川崎のムサコだ。目黒から見えるこちらのムサコはまるで副都心のようだ。遠目にはそのほとんどがタワマンとは思えない。それだけ特異な発展を遂げている。「武蔵小杉」では駅近くで1棟が建設中、「新子安」に近い日本医科大跡で2棟が計画中となっている。近所には来年開校予定の小学校の建設が進んでいた。