世界標準の教養として、特に欧米で重要視されているのが「ワイン」である。ビジネスや政治において、ワインは単なる飲み物以上の存在となっているのだ。そこで本連載では、『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』の著者であり、NYクリスティーズでアジア人初のワインスペシャリストとしても活躍した渡辺順子氏に、「教養としてのワイン」の知識を教えてもらう。今回は、日本でも有名な超高級ワイン「ロマネ・コンティ」の値段の高さについて解説してもらった。

年間6千本! ロマネ・コンティの希少性の高さ

 フランス東部に位置するブルゴーニュ地方は、ボルドーと並ぶ、フランス最高峰のワイン産地です。ブルゴーニュでは、畑に4つの格付けがなされています。その格付けは、上から「グランクリュ(特級畑)」「プルミエクリュ(1級畑)」「コミュナル」「レジョナル」と4段階に分かれています。

 グランクリュ(特級畑)は、その名の通り、最も格の高い特級の畑です。ロマネ・コンティやモンラッシェなど、世界的に有名なワインを産出する一部の畑だけに与えられた称号であり、グランクリュと認められている畑はブルゴーニュ全体のわずか1%しかありません。

 グランクリュでつくられたワインの場合、ラベルにその畑の名前が記されます。たとえば「ロマネ・コンティ」はぶどう畑の名前であり、造り手の名前でもありますが、ロマネ・コンティでつくられたワインには「Appellation Romanée-Conti Contrôlée」と記されます。つまり、ロマネ・コンティの畑を使えるのは「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(通称DRC)」だけで、それゆえ希少価値も高くなるのです。

 その生産本数は、年間およそ6千本ほどです。世界的に有名なボルドーの1級シャトーでも10万から20万本程度を生産するので、その20分の1から30分の1程度と聞くと、その希少性をおわかりいただけるでしょう。

 ロマネ・コンティは、多くの歴史上の人物たちも魅了しました。病弱だったルイ14世が、薬の変わりにスプーン1杯のロマネ・コンティを毎日飲んでいたのは有名な話です。

 また、ルイ15世の愛妾だったポンパドゥール夫人もロマネ・コンティに翻弄されました。ロマネ・コンティの所有者の座を巡りコンティ公と戦った夫人でしたが、コンティ公が破格の金額を提示したため、その願いは叶いませんでした。くしくも敗れた夫人は、その腹いせに宮廷からブルゴーニュのワインを一掃してしまったと言います。