働き方改革を邪魔する「凝り固まったおじさん」の改造法シンガポールのラッフルズホテル前にて、子どもたちの将来に思いを馳せる筆者

「サラリーマンになりたい」
子どもが発した言葉の意味

 個人的なことだが、先日、ちょっと感動する出来事があった。筆者は常日頃から、子どもたちに「大きな夢を持て」「色々なことにチャレンジしろ」と語り、吉田松陰や坂本龍馬やジョン・F・ケネディなど、様々な偉人の生き様を教えてきた。

 ところが先日、子どもがそうした教育の甲斐もなく「大きくなったらサラリーマンになりたい」と言い出したのだ。まだ11歳であるにもかかわらず、現実的すぎる将来の夢に、筆者は密かに落胆してしまった。

 しかし、この夢には理由があった。「パパが楽しそうに働いてるから、パパみたいになりたいんだ」と付け加えたのだ。このときの感動がどれほどのものか、わかってもらえるだろうか。涙で視界が0.7秒ほど見えなくなってしまったほどだ。親が油断していると、時折、こうした感動的な言葉で心を鷲づかみにされてしまうのだから、子どもは本当にすごいと感心してしまう。

 ただし、感動すると同時に筆者はふと心配になった。「パパみたいなサラリーマンになりたい」と言ってくれた子どもが社会人になったとき、日本でもシンガポールのようにワーク・ライフ・バランスが実現できているのかと。

 働き方改革気運の高まりに伴い、日本企業は残業上限規制やフレックスタイム制の見直しなどを推し進めている。しかし、こうしたワーク・ライフ・バランスの実現をネガティブにつぶしにかかろうとする「おじさん」が、企業社会にはいまだ随所に見られる。そして、そんな「おじさん」はあなたの職場にも潜んでいるはずだ。

 ワーク・ライフ・バランスを否定するおじさんがネガティブな意見を言う理由は、「より良い働き方」であっても、現状から変化するのが面倒臭いからに他ならない。「凝り固まった頭のおじさん」は、現状の問題点を棚卸しすることや解決策を見出すことを「大仕事」と感じてしまい、実は発展性の乏しい日々のルーティン業務から抜け出すことを恐れている。