世界標準の教養として、特に欧米で重要視されているのが「ワイン」である。ビジネスや政治において、ワインは単なる飲み物以上の存在となっているのだ。そこで本連載では、『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』の著者であり、NYクリスティーズでアジア人初のワインスペシャリストとしても活躍した渡辺順子氏に、「教養としてのワイン」の知識を教えてもらう。

欧米では始まっている「ワイン=投資」の流れ

 近年、ワインは「投資」としての側面も強くなってきました。2004年にはイギリスがSIPP(自己投資型個人年金)を投入し、ワインもその税制優遇措置の対象に入りました。その結果、欧米ではワインが投資として広く認識されるようになり、イギリスをはじめ、欧米に相次いでワインファンドが設立されます。金融や証券会社も、投資商品としてワインを取り扱い始め、その規模はますます拡大していきました。

 また、リーマンショック以降には、アメリカの経済紙で「SWAG」という単語を目にするようになりました。本来はアメリカの若者たちのあいだで使われる「センスがいい」「スタイリッシュ」といった意味のスラングですが、経済紙の「SWAG」とは、「Silver」「Wine」「Art」「Gold」の頭文字を並べたものです。

 これは、エコノミストのジョー・ローズマン氏が、株式投資より確実な投資商品として、インベストメントウィーク誌で「SWAG」を発表したのが始まりで、その後ブルームバーグも、高級ワインはゴールドよりリターンが確実であると予想しました。

 これらを受けて、リーマンショックで損失を被こうむった投資家たちはこぞってワインの収集を始めました。欧米の投資家に限らず、中国のニューリッチ層もワインの収集に加わり、ワインの価格は史上稀に見る上昇となったのです。