世界標準の教養として、特に欧米で重要視されているのが「ワイン」である。ビジネスや政治において、ワインは単なる飲み物以上の存在となっているのだ。そこで本連載では、『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』の著者であり、NYクリスティーズでアジア人初のワインスペシャリストとしても活躍した渡辺順子氏に、「教養としてのワイン」の知識を教えてもらう。

優雅にワインを楽しむために

 気楽にワインを楽しむことも大事ですが、ビジネスの席ではやはり世界共通のマナーに従うのが一流ビジネスマンとしての嗜みです。知っておきたいワインのビジネスマナーを拙著『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』から、いくつか抜粋して紹介します。

1.乾杯ではグラスを当てない
 乾杯の際にグラスを当てるかどうかは、使っているワイングラスにもよります。ビジネスディナーやフォーマルな席で使われる会場では、繊細な薄手のグラスを使用していることも多いので、勢い余って割れてしまわないよう、グラスを当てないほうが無難でしょう。繊細なグラスは少しの衝撃で割れてしまうことがあります。ただし、グラスを当てて音を出すほうが縁起がいいと考える国もあります。ホスト役の方がグラスを当てて乾杯していたら、それに従ってください。

2.ワイングラスを汚さない
 グラスを持つ際はステム(脚)の部分をしっかり持ちましょう。高級なグラスはとても薄くて繊細です。ボウルの部分を持って綺麗なクリスタルに指紋をつけたり、汚したりするのはマナー違反です。また、ボウルを鷲掴みにして飲むと相手に不快感を与えるので、優雅に飲むことも心得てください。

 食事とともにワインをいただく場合は、グラスに食べたものがつかないように注意しましょう。特に脂っこいものを食べた際は、必ずナプキンで口を拭いてからワインを飲むようにしてください。グラスの飲み口が汚れてしまったら、そっとナプキンで拭き取りましょう。女性の口紅がグラスについてしまうのも感心できません。

3.香りを楽しむ余裕を持つ
 ワインを飲む際は、2~3回グラスを回して香りを楽しみながら飲む習慣をつけてみましょう。香りを楽しみ、ゆっくりと味わうこともマナーのひとつです。ビールを飲むようにガブガブ飲んでしまっては、せっかくのワインが台無しです。

4.グラスいっぱいにワインをなみなみ注がない
 ゲストにワインを注ぐ際は、ホスト役の男性が注ぐようにしてください。赤ワインの場合はグラスになみなみ注がないようにしましょう。なみなみ注いでしまうとグラスを回しづらくなってしまいます。大きなグラスであれば、注ぐ量はグラス半分以下がいいでしょう。大きなグラスはボルドーやブルゴーニュなどの高級ワイン用のことも多いので、少しずつ注いでゆっくり味わっていただきます。

 白ワインの場合、ワインの質やヴィンテージによりますが、常にグラスを回して空気に触れさせる必要がないので適量を注いでください。フルートグラスにシャンパンやスパークリングワインを注ぐ際は、グラスいっぱいに注いでも大丈夫です。