今、顧客減、会員減に悩んでいる企業は多い。中でも定額課金=サブスクリプションモデルで利益を上げている場合には、会員取得ばかりに目を向けて、離れてしまう顧客には、なかなか有効な手を打てない現状だ。
元WOWOWグループ初の女性取締役であり、顧客を引き留める「リテンションマーケティング」で実績を上げた大坂祐希枝氏が初の著書である『売上の8割を占める 優良顧客を逃さない方法 利益を伸ばすリテンションマーケティング入門』を発売。
この連載では、この著書から一部抜粋してご紹介する。

事業に活かせるデータを収集、
社内で、そのデータを見える化させる!

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 前回は、私がWOWOWで作り始めた「面積表」のお話しをしました。

面積表とは、個々の番組の顧客獲得力を面積で表して、月ごとの新規顧客獲得見込みを見える化したもの。
マーケティング業務に関係のない社員も含め、WOWOWの全社員が番組編成と新規加入獲得の関係を一目でわかるようにしました。

加入動機などの顧客データを丁寧に取得し蓄積したことで、新規加入予測を可能になったことが分かると、マーケティングデータに関心がなく、販促費をかけて新規顧客を増やせばいいのだと主張していた社員を含め、全社員の行動スタイルに変化が見られ始めました。

「面積表」で新規加入数予測を把握し、自分の仕事に生かすという行動が、マーケティング業務に関係のない部署でもみられるようになったのです。

解約防止部の部長に任命されてから約5年が過ぎ、解約防止部は局に昇格し、解約しにくい優良顧客を入口の段階から狙いに行こうという考え方が生まれ、当時私は、加入の入り口から解約防止までを一貫してみるマーケティング局の局長になっていました。

 解約防止だけでなく、加入獲得の責任も負うようになり、広告予算も任されるようになったことで、どの番組の宣伝にどのくらいの予算をかけるべきか知るためにも、こうしたデータは有効でした。

 面積表の算出ベースとなっているのは、過去から蓄積してきた加入動機のデータです。2005年9月から、加入時に加入動機番組について聞き始めましたが、その数字の積み重ねが面積表の作成を可能にしました。

 かつてWOWOWでは、「○○電器店ルートで何件」「量販店ルートで何件」とルートごとに加入を予測していましたが、加入動機というデータを蓄積したことで、コンテンツごとに加入予測を立てられるようになったわけです。これは事業環境の変化に対応してマーケティング手法を変更した一例といえるでしょう。