確かに携帯電話料金は高く感じるが… 確かに携帯電話料金は高く感じるが…(写真はイメージです) Photo:PIXTA

注目されている
菅官房長官の発言

「わが国の携帯電話料金は、今より4割程度下げる余地がある」。菅義偉官房長官の発言が注目を集めている。この発言があった8月21日、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク(大手3社)は株価を下げた。

 主要国のシェアトップの通信キャリアの料金を比較すると、わが国(東京)の料金水準は2GBではニューヨークと同水準であるものの、5GBと20GBでは主要都市の中で最も高い。このデータをみると、確かにわが国の携帯電話料金は高い。菅長官の指摘は正しい。

 菅官房長官の発言には、家計の携帯電話料金の負担を軽減する狙いがあるとみられる。2019年10月に、安倍政権は消費税率の引き上げを予定している。携帯電話料金を引き下げることは、増税後の消費の落ち込みを緩和する上でそれなりの効果を持つことが想定される。

 また、政府は、通信業界で競争原理が働きやすい環境を整備したいとの思惑もあるはずだ。料金引き下げ発言の背景には、通信分野で改革を進めようとする政府の目論見(もくろみ)が見え隠れする。長い間、わが国の通信市場では寡占状態が続いてきた。携帯電話市場では、現在でも大手3社のシェアが90%に達する。政府はその状況に新しい風を吹き込みたい。

 ただ、政府高官が料金引き下げの発言を行っただけで、本格的な改革が進むとは考えにくい。むしろ、周波数の割り当てなどで競争原理が働きやすい環境作りが必要になる。今後、政府がわが国の通信業界の将来像を示し、長期的な視点で新しい取り組みが進みやすい環境を整備することに重点を置くべきだ。