26万部突破のベストセラー『最高の休息法』の著者・久賀谷亮医師が、テレビ番組「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)に再び出演した。「科学的な脳の休息法=マインドフルネス」について語った前回に続き、今回のテーマは「脳科学ダイエット」。ハードな運動や厳しい食事制限に頼らなくてもやせられる「科学的メソッド」に、スタジオの出演者一同は驚愕! そこで今回は、テレビには盛り込めなかった「脳効く食品・食べ方」について、久賀谷医師による話題の最新刊『脳が老いない世界一シンプルな方法』にも触れながら語ってもらった。

ガマンに逃げない!テレビで話題の「脳科学ダイエット」とは

『世界一受けたい授業』に再出演!「脳科学ダイエット」で語りきれなかった“脳を変える食事術”教えます!!

人間の細胞の老化は、染色体の末端にある「テロメア」という構造の長さに左右されることがわかっています。つまり、テロメアの長さこそが、身体をどれくらい若く維持できるかを決めているのです。

脳の老いに関しても、やはりカギを握るのはテロメアです。実際、アルツハイマー病患者の脳を調べると、アミロイドβなどの老廃物の蓄積があるほか、細胞レベルでは「テロメアの短縮」が観察されます。

『世界一受けたい授業』に再出演!「脳科学ダイエット」で語りきれなかった“脳を変える食事術”教えます!!

そこで気になるのが、いったいどうすればテロメアの長さを保てるのか、です。

『世界一受けたい授業』に再出演!「脳科学ダイエット」で語りきれなかった“脳を変える食事術”教えます!!久賀谷 亮(くがや・あきら)
医師(日米医師免許)/医学博士
イェール大学医学部精神神経科卒業。日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間にわたり従事する。2010年、米ロサンゼルスにてTransHope Medicalを開業。同院長として、マインドフルネス認知療法やTMS磁気治療など、最先端の治療を取り入れた診療を展開中。臨床医として日米で25年以上のキャリアを持つ。主著・共著合わせて50以上の論文があるほか、学会発表も多数。趣味はトライアスロン。米国在住。
著書に『脳が老いない世界一シンプルな方法』『世界のエリートがやっている 最高の休息法』『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』、監訳・解説書にジャドソン・ブルワー『あなたの脳は変えられる』がある。

運動睡眠、そしてマインドフルネスという瞑想法が有効であることが、膨大な学術的研究データによって実証されていますが、それらについては拙著『脳が老いない世界一シンプルな方法』をご覧いただくとして、今回は「食事」にフォーカスを当ててみましょう。

まず確認しておきたいのが、「テロメアの長さを保つうえでは、肥満はよくない」ということです。老化リスクを見るうえでは、腹囲とヒップの比率が重要な指標とされており、「お腹まわりが太っているほど、テロメア短縮のリスクは高まる」と言われています[*1]。

肥満が人間の寿命に大きな影響を与えるという話は、経験的にも納得がいくのではないでしょうか。みなさんの周りにも「太っているおじさん」はいると思いますが、「太っているおじいさん」にはなかなか出会わないはずです。太っている人はどうしても寿命が短くなりやすいということでしょう。

肥満を防ぐ/抜け出すうえでは、「激しい運動」や「無理な食事制限」は、長い目で見るとNGです。そうした「ガマン」に頼るやり方には致命的な問題があるからです。端的に言えば「続かない」からです。

考えてもみてください。「やせよう!」と決意して、長時間のランニングを開始しても、それは果たして続くでしょうか? 続いたとして、それはいつまで続けますか? 私たちは死ぬまで「食」とつき合わなければいけません。何十年にもわたって、つらい食事制限に耐え、我慢し続ける人生を送りますか?

本当にやせたいのなら「ガマン」に逃げてはいけません

肝心なのは、みなさんの脳を「がんばらなくても太らない状態/やせられる状態」に変えることなのです。そのための方法は『無理なくやせる脳科学ダイエット』(主婦の友社)でじっくりと語らせていただきました。

では、何を食べればいいのか?――テロメアを長くする食事

一方で、肥満を防ぎさえすればいいのかというと、そういうわけにもいきません。やはり「何を食べるか」も重要になってきます。そこでまずは、われわれの細胞の寿命・老化を司るテロメアに対して、ポジティブな影響を与えるとされる「食品」をご紹介しておきましょう[*2]。

▼テロメアを長くする食品
・繊維質の豊かなもの
(全粒穀物など)
・新鮮な野菜・果物
・豆類
・海藻
・緑茶、コーヒー

▼老化因子を抑える成分・食品
炎症を抑える―フラボノイドやカロチン(ベリー類、ぶどう、りんご、ケール、ブロッコリー、タマネギ、トマト、ネギなどに多く含まれる)
抗酸化作用がある―ベリー類、りんご、にんじん、緑色野菜、トマト、豆類、全粒穀物、緑茶など
インスリン抵抗性を減らす―甘い炭酸飲料や糖類の高い食品を減らす

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これ以外で注目されているのが、オメガ3脂肪酸を多く含む食べ物です。サケとかマグロのような魚、あとは葉物野菜に多く含まれているこの物質には抗酸化作用があり、細胞が酸化ストレスに晒されるのを防いでくれます。オメガ3脂肪酸は、テロメア短縮を32%防いだという報告もあるくらいです[*3]。

正直なところ、「食」というのは、科学的なエビデンスがあるとは言えない情報が、最も多く出回っている分野の一つです。もっともらしく語られていても、かなり根拠が怪しいものもあるので注意が必要です。しかし少なくとも、赤身の肉(とくに加工されたもの)、白いパン、甘いジュースなどは、細胞を老化させたくなければ、避けるべきだというのはたしかでしょう。その意味で、たとえば「ホットドックと炭酸ジュース」のような組み合わせは、医師としては決しておすすめできません。

いまの科学で最も確実に「脳に効く」と言える食事は?

次に、「アルツハイマー病予防の決定打」とも言うべき食事をご紹介しましょう。その名もマインド・ダイエット(MIND Diet)です。

これは正式にはMediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay Dietといって、地中海式料理(Mediterranean Diet)とDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension:高血圧症予防食事療法)という確立された2つの食事法のハイブリッド版です。

地中海式料理は、たくさんの野菜・果物・全粒穀物を、低脂肪で質の高いタンパク質(魚)と一緒に摂取する食事です。これにオリーブオイルとナッツを組み合わせることで認知機能が高まったというデータもありますし[*4]、全体としては、認知症リスクをおよそ20%減らすとされています[*5]。

もう一つのDASHは、野菜果物・全粒穀物・低脂肪乳製品など、地中海式料理に類似した内容に加えて、塩分の制限を中心に構成されています。高血圧を予防するために、塩分を控える点がポイントでしょう。

マインド・ダイエットは、これら2つを組み合わせたもので、野菜中心、動物性食品と飽和脂肪の制限、ベリー類や緑の葉物野菜の重視といった特色があります。923人を対象に4年半にわたって追跡した研究では、マインド・ダイエットに即した食事をとっている人は、そうでない人と比べて53%もアルツハイマー病のリスクが低かったと言われています。

マインド・ダイエットで推奨される食品をリストアップしておきました。次の食品項目を各1点とした場合(15点満点)、8.5点以上であれば、「マインド・ダイエットに即した食事」だと言えます。1単位食の摂取量の目安もあげておきました[*6]。

▼推奨される食品
全粒穀物:3単位食以上/日     全粒パン1枚/玄米1膳
緑の葉物野菜:6単位食以上/週     1カップ/250cc
その他の野菜:1単位食以上/日     1/2カップ
ベリー:2単位食以上/週     1/2カップ
魚類:1単位食以上/週     90グラム
鶏肉:2単位食以上/週     90グラム
豆類:3単位食以上/週     1/4カップ
ナッツ類:5単位食以上/週     15グラム
オリーブオイル:ふだん使う油にする
ワイン:グラス1杯/日程度

▼控えたい食品
赤身肉やその加工食品:4単位食以下/週     90グラム
ファーストフード・揚げ物:1単位食未満/週     1個
バター・マーガリン:大さじ1杯未満/日
チーズ:1単位食未満/週     45グラム
ケーキなど甘いもの:1単位食未満/週     ドーナツ1個

繰り返しになりますが、食事についてはまだはっきりしない点が少なくありません。しかし、少なくとも上記は、現状の科学に基づいて言える、最も確実な食事です。

どう食べればいいのか?――食事瞑想とRAIN

では、最後にこれらの食事を「どう食べればいいか」についても、少しだけ解説しておきましょう。ご紹介する方法は2つ、すなわち、「食事瞑想」と「RAIN」です。

食事瞑想をするときには、食べる前に「30秒の余白」をつくってみましょう。いきなり目の前のものに手を伸ばすのではなく、自分の欲求に注意を向けたりするための「ブランク」をつくります。「なぜ食べたいか?」を意識したり、「食べものが食卓に届くまでにどんな由来をたどってきたのか?」に思いを馳せてみるのもいいでしょう[*7]。

食べるときも、食べ物の見た目、匂い、温度などにじっくり注意を向け、初めてものを食べる子どものように、食感や味の変化などをゆっくり味わいます。

『世界一受けたい授業』に再出演!「脳科学ダイエット」で語りきれなかった“脳を変える食事術”教えます!!食べるとき「自動操縦」モードになってしまっていないか?
「食べること」「食べるもの」に徹底的に注意を向けてみる。

もう一つ、おすすめなのが、RAINという4ステップです。これは「食べたい!」「飲みたい!」といった衝動的な渇望感(クレーヴィング)を和らげる際に、効果的な手法です。「ついつい食べ過ぎてしまう」「どうしても食欲が抑えられない」という人はぜひやってみてください[*8]。

ステップ1 認識する(Recognize)
注意を向けて、クレーヴィング(例「お菓子を食べたい!」)に気づく。そして、渇望を感じながらも、深呼吸などをしてリラックスしましょう。

ステップ2 受け入れる(Accept)
クレーヴィングを受け入れる。抑え込んだり、無視したりしようとせず、自分のなかにある当たり前の経験として受けとめます。サーファーが波を抑えつけようとせず、それを受け入れて、その波に乗るのと同じように。

ステップ3 検証する(Investigate)
クレーヴィングが強まってくるにつれ、「いま、自分の身体がどんなふうに感じているか?」を客観的に調べる。「お腹のあたりがギュッとなる」とか「つばが出てくる」など、身体的な変化に注意を向けましょう。

ステップ4 明記する(Note)
クレーヴィングをあたかも「他人事」のように自分から切り離す。そのためにはその感覚を短いフレーズ・単語として書き出すのが効果的です。「胃のなかが落ち着かない感じ」「胸の奥がザワザワと燃えるような感覚」など。場合によっては、そのような衝動にオリジナルな「愛称」をつけてもいいでしょう。そして、その感覚の推移(強さ、性質、広がりなど)を追いかけていきます。もし注意が横へ逸れたら、再びステップ3に戻り、クレーヴィングがなくなるまでその波に乗っていくようにしましょう。

いかがでしたでしょうか? ぜひ以上を参考にして、「より長持ちする脳」をつくっていただければと思います。

参考文献
[*1] Wulaningsih, W., Watkins, J., Matsuguchi, T., & Hardy, R. (2016). Investigating the associations between adiposity, life course overweight trajectories, and telomere length. Aging (Albany NY), 8(11), 2689.
[*2] Blackburn, E. & Epel, E. (2017). The Telomere Effect: A Revolutionary Approach to Living Younger, Healthier, Longer. Grand Central Publishing.
[*3] Farzaneh-Far, R., Lin, J., Epel, E. S., Harris, W. S., Blackburn, E. H., & Whooley, M. A. (2010). Association of marine omega-3 fatty acid levels with telomeric aging in patients with coronary heart disease. JAMA, 303(3), 250-257.
[*4] Valls-Pedret, C., Sala-Vila, A., Serra-Mir, M., Corella, D., De la Torre, R., Martínez-González, M. Á., ... & Estruch, R. (2015). Mediterranean diet and age-related cognitive decline: a randomized clinical trial. JAMA Internal medicine, 175(7), 1094-1103.
[*5] Feart, C., Samieri, C., Rondeau, V., Amieva, H., Portet, F., Dartigues, J. F., ... & Barberger-Gateau, P. (2009). Adherence to a Mediterranean diet, cognitive decline, and risk of dementia. JAMA, 302(6), 638-648; Singh, B., Parsaik, A. K., Mielke, M. M., Erwin, P. J., Knopman, D. S., Petersen, R. C., & Roberts, R. O. (2014). Association of mediterranean diet with mild cognitive impairment and Alzheimer's disease: a systematic review and meta-analysis. Journal of Alzheimer's Disease, 39(2), 271-282; Lourida, I., Soni, M., Thompson-Coon, J., Purandare, N., Lang, I. A., Ukoumunne, O. C., & Llewellyn, D. J. (2013). Mediterranean diet, cognitive function, and dementia: a systematic review. Epidemiology, 24(4), 479-489.; Sofi, F., Abbate, R., Gensini, G. F., & Casini, A. (2010). Accruing evidence on benefits of adherence to the Mediterranean diet on health: an updated systematic review and meta-analysis. The American Journal of Clinical Nutrition, 92(5), 1189-1196; Rijpma, A., Meulenbroek, O., & Rikkert, M. O. (2014). Cholinesterase inhibitors and add-on nutritional supplements in Alzheimer's disease: a systematic review of randomized controlled trials. Ageing Research Reviews, 16, 105-112.
[*6] Morris, M. C., Tangney, C. C., Wang, Y., Sacks, F. M., Bennett, D. A., & Aggarwal, N. T. (2015). MIND diet associated with reduced incidence of Alzheimer's disease. Alzheimer's & Dementia, 11(9), 1007-1014; American Heart Association. (2017). Suggested Servings from Each Food Group. [https://www.heart.org/en/healthy-living/healthy-eating/eat-smart/nutrition-basics/suggested-servings-from-each-food-group]
[*7] 久賀谷亮. (2018). 無理なくやせる“脳科学ダイエット”. 主婦の友社.
[*8] Brewer, J. The Craving Mind. Yale University Press. (邦訳:久賀谷亮[監訳・解説]、岩坂彰[訳]. あなたの脳は変えられる―「やめられない!」の神経ループから抜け出す方法. ダイヤモンド社)