スピードと安さ、安定した印刷品質が「ネット印刷」サービスの大きな魅力だ。
明瞭な料金表示と納期厳守は当たり前。プロからの信頼も厚く、ネット印刷を自社の受注獲得手段として活用する地場の印刷会社も増えている。

ネット印刷を活用する
地場の印刷会社が増加

ブライター・レイター代表/
印刷専門コンサルタント
山下潤一郎
1968年静岡県浜松市生まれ。国際基督教大学(ICU)卒業後、米国系戦略コンサルティングファーム、欧州系通信機器メーカー、国内インターネットサービス会社、米国系デジタル印刷市場調査会社などを経て、2011年ブライター・レイターを設立。ブライター・レイターは印刷業界に特化したマーケティング・コンサルティング会社で、特にウェブやデジタル印刷機材を活用した新しいサービスの立ち上げ/既存サービスの立て直し支援を得意とする

 印刷通販会社のウェブサイトから印刷物の入稿データを送信して注文すれば、完成した印刷物が届くのがネット印刷サービスだ。扱う商材はフライヤー・チラシ、ポスター、名刺、カレンダー、パンフレット、冊子、封筒、ポストカード、シール・ラベル、のぼり、チケット、フォトブックなど非常に幅広い。入稿データを自分で用意しなければならない手間はあるが、何といっても「安くて早い」のが魅力だ。

 そもそもネット印刷が注目され始めたのは2008年のリーマンショックを過ぎた頃から。企業の経費削減ニーズの高まりとインターネット、EC(電子商取引)の普及が追い風となった。紙媒体の需要が減って印刷市場全体が緩やかな縮小傾向にある中、ネット印刷市場は毎年拡大を続けている。

 この背景には地場の印刷会社や広告代理店、制作会社などの利用者が増えてきたことが挙げられる。印刷専門コンサルタントの山下潤一郎氏は次のように話す。

「10年前は価格破壊を起こす印刷業界の敵といった見方もありましたが、ここ数年は中小零細の印刷会社が急ぎや繁忙時の仕事、利益の少ない仕事などを、ネット印刷に回して売り上げアップにつなげるといったように、うまく使いこなすようになってきました」

 つまり、外部に出しても利益が出るほどネット印刷の価格が安いわけだが、「安かろう、悪かろう」では話にならない。品質に問題はないのだろうか。

「特に印刷通販大手は、業容拡大に合わせてその都度、最新の印刷機を導入しているため、むしろ印刷品質が高く、早く印刷できるのが強みです。億単位の投資が必要な大型の印刷設備は10年以上使うことも多いので、高齢化が進む地場の印刷会社では設備投資をするよりはネット印刷を利用した方がいいという判断もあるでしょう」

 今やそうした中小零細の印刷会社にとって、印刷通販会社はパートナー的存在になりつつあるようだ。もし、「採算が合わず、今までは断っていた仕事」などがあるようなら、ネット印刷を利用してみるのも一つの手かもしれない。