配送される生鮮食品の見本楽天西友共同戦線の立ち上がりは順調だ 写真:つのだよしお/アフロ

 楽天と西友がタッグを組んだ「楽天西友ネットスーパー」が堅調だ。10月に正式オープンしたところだが、開始3週間で新規客がプレオープン時の1.4倍に跳ね上がった。西友の店舗からの配送だけでなく、千葉県柏市に4300坪の専用倉庫を設置し、そこから関東圏に数カ所ある拠点に配送する。「西友がなかった地域への配達に加え、注文が多く配送予約が取りにくかった地域での混雑解消が進んでいる」(楽天広報)ため、都心部でいままで取り逃していた客を一気に拾う算段だ。

 流通各社のネットスーパー事業は、店舗で売るよりも配送やオペレーションのコストがかさむ。だが、それを価格に転嫁できていないため、どこも赤字を垂れ流している。今年度に入り、配送費の高騰や配送事業者の不足で収益構造はさらに悪化し、ついにローソンがネット宅配事業から撤退した。

 そんな厳しい環境下で、なぜ楽天西友は好調なスタートを切れたのか。同社の強みは、楽天がポイントで囲い込んだID数が1億を超える「楽天経済圏」にある。「ポイント3倍デー」などのキャンペーンがネットスーパーでも適用されるため、通常時より売り上げが3割上がるなど、楽天経済圏からかなりの潜在顧客を獲得している。

シニアの利用者が急増

 当面のライバルはアマゾンだ。楽天西友の商品数が最大2万点なのに対し、「アマゾンフレッシュ」は17万点、うち2500点は生鮮食品だ。川崎市高津区にある物流拠点を中心に管理され、ロボットではなく人ベースでの管理が徹底されている。

 アマゾンフレッシュとは別に、最短2時間で商品を届ける「プライムナウ」もあるが、実はこの二つのサービスは今年3月に組織統合しており、今後は物流や品ぞろえの統合もあるとみられる。「人々が普段購入するものの中で最も金額が大きいのは食品。いま生鮮食品を販売し、食品カテゴリーのシェアを取らないと会社の成長スピードが落ちてしまう」とプライムナウ/アマゾンフレッシュ事業本部の湖東彰彦事業本部長は焦りを隠さない。

 経済産業省によると、食品の国内EC市場は約1.5兆円で、EC化率はたった2%。今後大きな伸びが期待される市場でもあり、アマゾンも全力でその市場に挑む。

 楽天西友に勝機はあるのか。流通経済研究所の池田満寿次主任研究員は、「近年では、買い物に出掛けるのに苦労するシニア層のネットスーパー利用者が増えている」と話す。ネットスーパーの利用を希望するシニア層にとっては、西友という実店舗がある楽天西友の方が親しみやすい可能性はある。

 ネットスーパーの市場が今後伸びるのは間違いない。だがその果実にありつくためには、激しい競争が待ち受けている。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相馬留美)