「転職先探しは、恋愛や結婚に似ています」と明かすのは、リクルートエージェント キャリア・コンサルタントの平原俊幸氏だ。数多くのコンサルティング事例から、担当する金融業界、コンサルティング業界の具体的な転職例を挙げてもらいながら、転職を成功させるためのポイントを聞いた。

他業界・他職種への転職を
成功させた実例は少なくない

――担当する業界で、転職に成功した例を教えてください。

平原 金融やコンサルティングは、限られた特殊な仕事と捉えられがちですが、実は他業界からの転職も少なくありません。

 コンサルティング・ファームへの転職を果たした20代の男性・Aさんは、機械メーカーで営業職に就いていました。実はそのメーカーでナンバーワンの営業担当者と評価されている逸材でしたが、Aさんご自身はもっと深くお客様に貢献できる仕事をしたいとの考えから、キャリアアップのための転職を目指したのです。

 当初、営業職を希望していましたが、活動を進めるにつれて、戦略コンサルタントという選択肢にも目が向いていきました。

――キャリアチェンジということになると思いますが、どうしてうまくいったのでしょうか。

平原 筆記試験等で相応の成績をとれたことはもちろんですが、何より顧客への対応力の面が大きいと思います。大企業の日本一の営業担当だけあって、雰囲気づくりや話題の選び方など、総合的にコミュニケーション力が高いのです。コンサルタントとして相手の本音を引き出せる点、チームワークに向いているといった点を評価して、コンサルティング・ファームは採用を決めたそうです。

――ほかにもキャリアチェンジの事例はありますか。

平原 SI(システム開発)会社から大手証券会社に転職したのは、30代後半の男性・Bさんです。SIにお勤めの方には、システム開発プロジェクトやソリューションに携わるうちに、「ユーザー側企業で働いてみたい」と考えることが少なくないようです。

 ところが、どんな会社を望むかなど、具体的には考えが進みにくい。日々、お忙しいこともあるでしょうし、他の業界のイメージがわきにくい部分もあるかと思います。Bさんもそんなおひとりでした。証券会社側では、社内基幹システムの入れ替えを予定していて、システム部門の専門人材を拡充しようとしていました。

 システムに詳しく、自社のカルチャーに合う人を求めていたところ、Bさんがマッチしたのです。Bさんは、仕事の内容をガラリと変えたわけではありませんが、まったく異なる業界に活躍の場を見つけたことになります。