公的支援と大リストラをベースに鮮やかなV字回復を遂げた後、サービスの質を上げて好業績を継続し、ついに成長戦略にかじを切った日本航空。膨らむ費用と利益のバランスをどのように取るのか。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

「組織として安全運航のプロセスが足りなかった。責任は重大だ」。日本航空(JAL)の副操縦士による飲酒問題で、赤坂祐二社長は記者会見の席上、反省の弁を繰り返した。

 10月末、副操縦士が滞在先の英国で規定値を大幅に上回るアルコールが呼気から検出され、乗務直前に逮捕される事件が発覚した。前代未聞の不祥事に揺れるJALだが、業績に目を向けると絶好調。高い収益性を誇る(図1)。

 この好業績は2010年の経営破綻時に、国を挙げての支援が行われたことがベースになっているのは周知の通りだ。約5200億円の債権放棄がなされた他、約3500億円の公的資金が注入されるなど巨費が投じられた。

 もちろんJALの自助努力もある。人員を3割削減し、不採算路線から撤退、古い機材を処分するなど大規模なリストラを断行した。

 こうして財務体質を劇的に改善させ、12年には再上場。その後、16年までの再建フェーズでは「仮にまたリーマンショック級の不況が起きて世界中のフルサービスキャリアが経営難に陥ったとしても生き残れる会社を目指した」(木藤祐一郎財務部長)。

 具体的には自己資本比率50%、営業利益率10%を経営目標に設定。達成に向けて空港ラウンジの改修や、黒の革張りシートに象徴される機内仕様の刷新、さらにボーイング787を導入するなどサービスの質を上げて顧客の呼び戻しを図った。これらが奏功し、近年は出張・観光用途、日本人・訪日外国人を問わず航空需要が旺盛なこともあって、好業績が続く。

 当然ではあるが、破綻前とはバランスシートは様変わりした。負債が格段に減って利益を積み増し、純資産は約1兆円に倍増。ホテル事業売却や機材処分などで資産も圧縮した(図2)。