またもや、「対症療法」にすぎなかった。

 シティグループの分割、バンク・オブ・アメリカ(以下、バンカメ)への公的資金再投入。1月16日に相次いで発表された大手米銀の再建・救済策も金融危機の抜本的解決策にはほど遠いものだった。「不良資産の損失確定」にまで踏み込めなかったからだ。

 シティは、中核的事業を担うシティコープと非中核的事業を担うシティホールディングスの2つに事業を再編する。

 中核的事業には投資銀行、プライベートバンク、商業銀行、カードの各業務が含まれる。

 一方、非中核事業には、日興コーディアル証券や日興アセットマネジメントを含む証券仲介・資産運用や、スミス・バーニー証券、日本も含む消費者金融業務と、政府の損失保証を受けた3010億ドルの不良資産が該当する。「いわゆるグッドバンクとバッドバンクに分けた」(石原哲夫・みずほ証券シニアクレジットアナリスト)かたちだ。

 ただ、分割後の中核事業を担うシティコープとて、その将来は決して明るくない。たとえば、カード事業の償却率はうなぎ登り。2008年第4四半期の北米地域のカード部門の年率換算償却率は8.22%と、前期比で0.92%も増加した。米国の消費者向け銀行業務も同様の状態にある。

 200億ドルの公的資金投入を受けるバンカメは、買収したメリルリンチが第4四半期に計上した153億1100万ドルの損失をこれで埋め合わせる。また、シティ同様にメリルリンチ保有分を主とした不良資産1180億ドルに対し政府保証を受ける。

 しかし、不良資産はバランスシートに残ったままであり、損失額は確定しない。また、カードローンの償却率(年率換算)が第3四半期の6.4%から第4四半期に7.16%に上昇するなど、やはり融資の劣化が進んでいる。

 加えて、「シティなどより米国内比率が高いぶん、今後、米国景気悪化がより深刻に業績に影を落とす」(中空麻奈・BNPパリバ証券クレジット調査部長)。

 景気が急速に落ち込み、不良債権がふくらむ現状では、シティ、バンカメとも現施策では損失のメドは立たない。

 資産を精査し、不良資産を売却しなければ、損失額は確定しない。そのうえで、必要な資本を確保する公的資金投入をしなければ、銀行の貸し渋りに歯止めがかからないのは明らかだ。「損失確定にはやはり不良債権買い取りの仕組みが必要」(中川隆・大和証券SMBC金融市場調査部次長)となる。

 不良資産買い取り機構設立との報道も一部で流れたが、いまだ具体的な像は見えない。手当てが遅れれば遅れるほど金融機関の損失はふくらみ、貸し渋りに拍車がかかる。オバマ新政権にとって、景気対策と並ぶ焦眉の急の課題だ。就任式当日の金融株下落がそのことを如実に物語っている。
 
(『週刊ダイヤモンド』編集部  竹田孝洋)