生活保護の理不尽と戦った障害を持つ子と母の「月8万円生活」昨年12月、大学などへの進学が認められていない生活保護世帯の子に対して、専門学校への進学を認める裁決が行われた。現状打開のきっかけとなるか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

生活保護での専門学校進学を
認めた大阪府裁決はなぜ画期的か

 昨年2018年12月11日、大阪府で画期的な出来事があった。生活保護のもとで、専門学校への進学を認める裁決が行われたのだ。

「すごく長く感じられました。結局裁決が出たのは、息子の専門学校生活がもうすぐ終わる時期です。それでも、裁判で何年も争うことにならなくて良かったです」

 こう語るのは、大阪府M市の篠田真紀子さん(仮名・54歳)だ。篠田さんは、発達障害を持つ息子の光さん(仮名・20歳)と2人暮らしのシングルマザーで、光さんが5歳のときから生活保護で暮らしている。篠田さんは、障害を持つ光さんのケア、障害児教育や福祉に関する煩雑な手続きの数々をこなしながら、パート就労も続けてきた。幼少の頃から絵が得意だった光さんは、専門学校の2年生として絵画を学んでおり、3月に卒業する予定だ。

 現在、生活保護のもとでの大学などへの進学は認められていない。生活保護世帯の子どもが、他の家族と同居したまま大学などに進学する場合、本人を別世帯とする「世帯分離」を行い、本人以外の家族だけが生活保護の対象となる。この原則は、篠田さん親子にも適用された。

 2017年4月、光さんは高校を卒業して専門学校に進学した。すると生活保護の生活費は、1ヵ月あたり約14万円から約8万円になった。10代後半で食べ盛りの光さんは、母である篠田さんと「世帯分離」され、母の生活保護世帯には「いない」ことにされた。

 光さんの学費・修学に必要な費用・国民健康保険料・医療費の自費負担などは、どのような手当の対象にもならないのだが、コミュニケーション能力に大きな障害がある光さんは、アルバイトで収入を得ることも無理だ。結局、高校卒業後の学業と生活に必要な費用のほとんどは、光さんの学生支援機構奨学金の借り入れで賄ってきた。他に方法がなかったからだ。