ギリシャ問題が深刻化するにつれ、ユーロ圏の銀行間の大口決済システムであるTARGET2に絡むリスクに注目が集まっている。

 ギリシャの自動車販売会社がドイツのメーカーから自動車を輸入したケースを単純化して考えてみる。そのギリシャ企業は、ギリシャのA銀行に、自分の口座から自動車購入代金を引き落として、ドイツのB銀行にある自動車メーカーの口座に送金するように依頼する。A銀行がTARGET2にその送金を指示すると、ギリシャ中央銀行にあるA銀行の当座預金が引き落とされる。ギリシャ中銀はその資金を送金するのではなく、手元に置いておく。

 一方、ドイツ中銀はTARGET2の指示に従い、信用創造を行って、その額に相当する資金をB銀行に払う。事実上、ドイツ中銀はギリシャ中銀の金を立て替える。その後、B銀行はそれを自動車メーカーの口座に入金する。

 この一連の送金によって、TARGET2に対してギリシャ中銀は債務を、ドイツ中銀は債権を持つことになる。このような資金決済を続けていくと、ユーロ圏内で経常赤字の国は債務が、経常黒字の国は債権が、それぞれ累増していく。となると、これは長期的な維持が困難になる奇妙な決済システムに見えてしまう。

 しかし、金融市場が通常通り機能し、かつユーロ域内の銀行の信用力に問題が起きなければ、インターバンクの資金貸借市場では、資金余剰となっている域内経常黒字の国の銀行から、資金不足にある域内経常赤字の国の銀行に、資金が自然と貸し出されていく。