問診を受ける女性Photo:PIXTA

 患者が医師に真実を言うとは限らない。「薬はキチンと飲んでいます(実は残薬だらけ)」とか、「治療の内容はよくわかりました(実は理解していない)」とか何とか――。

 米ユタ大学の調査によると、医師に本当のことを言わない理由のトップは「医者に責められるのが嫌だから」だという。

 同調査は、平均年齢36歳の若年層(2011人)と同61歳の中高年層(2499人)を対象に、インターネット経由で行われた。

 対象者には医療者(医師、看護師)とのやりとりのなかで真実を伝えなかった事柄と、その理由を質問している。

 その結果、最も口をつぐんでしまうのは「医者に勧められた治療に同意できない」という重大なもので、実に若年層の46%、中高年層の36%が「その治療は受けたくない」という意思を伝えられないことがわかった。

 次いで「医者の話す内容が理解できない」(若年層32%、中高年層24%)、「不健康な食生活」(同24%、同20%)、「薬を指示通りに服用していない」(同22%、同18%)などだった。

 また、真実をごまかしてしまう理由のトップは「医者に批判、説教をされたくない」(同82%、同64%)で、次いで「自分の生活習慣がどれほど有害か知りたくない」(同76%、同61%)、「認めるのが恥ずかしい」「やっかいな患者と思われる」などが続いた。

 研究者は、多くの患者が意識的に真実を伝えないことについて「医者の話を理解できないことや、不健康な生活習慣に対する羞恥心と恐怖心が影響しているのでは」と考察している。ちなみに、真実を伝えることをためらう傾向は、若年層、中高年層ともに女性がより高かった。

 医療の現場では、些細なごまかしが医療事故や健康被害につながる例に事欠かない。特に医師の説明を理解しないまま、治療や手術に臨むのは危険なことだ。

「先生に怒られたくない、嫌われたくない」という気持ちは脇において、事実に基づいたコミュニケーションを心がけよう。ごまかしリスクは思う以上に大きい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)