日本企業に求められる「起業家サラリーマン」会社員であっても、起業家のごとく自ら道を切り開く気概は、今後ますます必要になってくる Photo:Konstantin Trubavin/gettyimages

 平成の30年間を振り返ってみると、日本の産業界は停滞し続けてきた。この原因は、高度成長型の産業からイノベーション型の産業への転換ができなかったことにある。

 日本企業は大急ぎでその転換を図るべきだが、その前に見過ごせない現実がある。それは「サラリーマン」の活力低下だ。

 サラリーマンは、かつては楽しく輝かしい仕事だった。サラリーマンの一番の特徴は、上からの命令や期待に応えることを第一に動くことだ。終身雇用のため、給料は継続してもらえる。さらに、年功序列が基本なので、誰でもそれなりに昇進や昇給の階段を上っていく。だから、あくせくせず、ただ目の前の仕事を一生懸命行えばよかった。

 1980年代にサラリーマンだった私は、上からの命令や期待に応えるだけでは飽き足らず、イノベーションにチャレンジしようともがいていた。変わった社員だったはずだ。だが、雇用の保証があったことで目先の損得に関係なく、自由に動くことができた。そのころは企業の管理がまだ緩い時代。従業員が個人として動く「のりしろ」が大きく、チャレンジへの寛容度は比較的大きかった。

 私は「闇研(究)」と称して、会社の仕事とは関係ない未来イノベーションを仲間と議論し合い、会社に内緒で試作まで行っていた。

 また、「クロスオーバー研究会」という社内の横断的な議論の場を立ち上げ、さまざまな分野の若手を誘って新分野の勉強をしていた。暗くなってからこっそり集まり、まるで秘密結社のような怪しい活動だった。会社のトップになったような気になって、未来戦略について大真面目に議論をしていた。会社の幹部は見て見ぬふりをしてくれていた。