開成・麻布・灘・筑波大駒場・渋谷幕張…。東京・吉祥寺の進学塾VAMOSは、「入塾テストなし・先着順」で生徒を選抜しないのに有名難関校に続々合格させると話題の塾だ。男女別カリキュラムを取り入れたロジカルで科学的な学習法は、保護者から圧倒的な支持を集めている。本連載では、VAMOSの学習メソッドが凝縮された最新刊『男の子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)の内容から、子どもの計画・理解・反復・習慣のプロセスを体系化した「男の子の特性」に基づく学習法をお伝えしていく。

子どもの「考える力」を伸ばすベストな方法とは?

考える力とは「1つひとつの知識を有機的につなげる力」

 VAMOSでは、基礎の反復学習を徹底して行います。一方で、中学入試には、基礎的学力だけではどうにもならず、「考えて」解かなければならない問題も多数、出題されます。そのため、「基礎ばかりやっていないで、もっと考える力をつけさせなければ」と心配する親御さんもいます。

 しかし、考える力は基礎的な知識の蓄積があって生まれるものです。漢字がわからない子どもが、難しい書籍を読むことも、立派な論文を書くことも不可能なように、基礎的な知識が蓄積されていない子どもが「考える力」を磨くことなどできません。

 ビジネスの現場でも、盛んに「考える力が大事だ」といわれます。しかし、この言い方は実に漠然としています。いったいなにを基準に、みなさんは考える力について判断しているのでしょう。

 プレゼンを上手にこなして契約が取れたとき、それは考える力があったからなのでしょうか。プレゼンが成功したのは業界ごとのデータ分析をしたり、見やすい資料をつくったり、市場のニーズを読み解いたり、相手の心を動かす的確な言葉を使ったりといった基礎的なビジネススキルの蓄積があったからだと思います。

 少なくとも最初から「考える力」というスキルがあるわけではなく、基礎的なビジネススキルを総合した上で、正しく考えることができると言えるのではないでしょうか。

 子どもたちにとって、基礎的な知識が「既知」だとすれば、考える力は「未知」。参考書に出ていたことをたくさん覚えて既知を増やしても、未知のことはすぐには理解できません。たとえば、はじめて見るようなグラフが試験に出てきたら「なんだこれ? 自分が知らない世界だ」と焦るでしょう。

 しかし、これまで勉強してきた既知の要素をいろいろ組み合わせることで、そのグラフの意味がわかってきます。

 今まで一度も解いたことがないような未知の問題でも、既知の知識の中からパーツを取りだして使っていけば解けるのです。一方で、基礎的な知識量が不足していれば、その問題はどう頑張っても解くことができません。

 考える力とは、「1つひとつの知識を有機的につなげる力」と言い換えることができます。そのときに、つなげる「線」だけを長く強くしようとするのは不毛で、「点」である知識を増やすことこそ優先されるべきです。というのも、点がたくさんあれば、短い線でもどんどんつながっていくからです。