中高年になってからこそ「SF本」を読むべき理由みなさんは、家か通勤や移動の隙間時間に本を読んでいますか?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

20歳からの10年間で
4000冊の本を読む

 私は本の虫です。ただ、子どもの頃からそうだったかというと、そうではありません。科学大好き少年だったので、実験や模型製作に没頭したり、科学雑誌を中心に本をむさぼり読んでいました。しかし文学には全く興味がなく、小説などは眼中にありませんでした。

 それが本の虫になったのは20歳の頃、テレビ局で使い走りのアルバイトをしていた時でした。番組と番組の間は暇なので、暇潰しに文庫本を読むようになったのです。最初に読んだのは荻昌弘氏の『男のだいどこ』だったと思います。

 面白かった。食べ物には昔から興味があったので、「こんなものを食べてみたい。作ってみたい」と夢が広がり、その後はのめり込むように本の虫になりました。邱永漢氏の『象牙の箸』、檀一雄の『檀流クッキング』と、最初は食べ物関係のエッセイを読み始め、次に科学好きだったこともあって、SFの本を読み始めました。ここに来て完全に本の世界にはまり込みました。

 いつの頃からか、1日1冊文庫本を読もうと決め、それを30歳まで続けました。その結果、勉強のための本や仕事に必要な本は除いて、文庫本を中心に楽しみのために読んだ本は4000冊ほどに及んだ計算になります。

 ちなみに、後年、よく聞かれるようになったので、考えた自分なりのベスト3は以下になります。

 第3位は開高健さんの『新しい天体』。このタイトルは、『美味礼讃』で有名なフランスの美食家、ブリア・サヴァランの「新しいごちそうの発見は人類の幸福にとって新しい天体の発見以上のものである」との言葉に由来します。