苦境の電機業界がさらされる<br />“聖域”なき本社リストラの波抜本的な工場の統合再編や人員整理ができなかった、歴代経営陣のツケはあまりにも重い
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 これまで“聖域”だった本社にも、ついに大幅な人員削減の波が押し寄せた──。

 半導体大手のルネサスエレクトロニクスが、主力生産拠点の一つである鶴岡工場(山形県)の売却とともに、全従業員の約3割に当たる1万数千人のリストラを検討していることが明らかになった。

 ルネサスといえば、昨年3月の東日本大震災で脚光を浴びたことが記憶に新しい。

 クルマや家電などを制御する基幹部品のマイコンでは世界シェア1位を誇り、自動車向けだけなら42%と圧倒的。供給が滞れば、トヨタ自動車や米フォード・モーターの生産ラインが止まってしまうほどの、影響力が浮き彫りになったのだ。

 ところが、経営面では慢性的な赤字を垂れ流してきた。

 2012年3月期の通期決算では、売上高8831億円(前期比22%減)、最終損益は626億円の赤字。出身母体の3社(日立製作所、三菱電機、NEC)が抱えていた20近い国内工場の統廃合や、生産技術の統合が進まず、「世界で最も非効率な半導体メーカーの一つ」(専門家)と評されてきた。

 すでに5000人規模のリストラ策が浮上していたが、「金融機関から今後の支援が取り付けられないとして、先送りにしてきた抜本改革に取り組み始めた」(業界関係者)というわけだ。

 そこで工場再編と並行して進んでいるのが、意外な方法による、本社部門のリストラだ。

「本社機能の一部を、中国の上海に移す計画が進んでいる」と、関係者が明かす。