世界の高級ショップが垂涎、オンリーワンの日本製「リブ編みニット」松井ニット技研が手がける、リブ編みニットによるマフラー

プラド美術館所蔵の名画を
イメージしたマフラーが人気

 2018年、日本とスペインは国交樹立150周年を迎え、様々な記念イベントが行われた。その1つが、プラド美術館所蔵の名画70点を紹介する美術展で、2月から国立西洋美術館、6月から兵庫県立美術館で開催された。目玉となる作品が、巨匠ベラスケスの描いた『王太子バルタサール・カルロス騎馬像』である。

 この名画をイメージして特別につくられたマフラー(次ページ写真)が、両美術館ショップなどで販売されて人気を呼んでいる。まだ幼い馬上の王子はピンク色のサッシュ(装飾用帯)を身に着け、りりしく指揮棒を掲げている。

 制作したのは、創業111年を迎える桐生市の松井ニット技研だ。自らデザインも行う社長の松井智司(80歳)はこう語る。

「王子のピンク、バックのブルーとグリーン、馬のブラウン、大きく3つの色をイメージして編み上げました」

 営業を統括する専務の松井敏夫(75歳)は、「幸い、すぐ売り切れで追加注文がありました。プラド美術館のショップ、駐スペイン日本大使館公邸、ジェトロ(日本貿易振興機構)のマドリード事務所でも展示され、『スペインの優れた文化と日本の匠の技の融合』とスペイン要人に説明されています。民間外交の一助になれたかなと思っています」と、うれしそうに言う。

 敏夫は、新聞で国交150周年とプラド美術館展のことを知ると、即座にプラド美術館に連絡を取って、ベラスケス作品からマフラーをつくる許可を得た。それが可能だったのも、松井ニット技研はすでに同館と長い関係があったからだ。

 同社の販売体制は繊維業界では異端だ。通常は地元の産地問屋を通して小売店に流れるのだが、一切中間流通を通さず、小売店や一般消費者に直接販売している。