操縦席今起きている事象に対処するだけの人間では、パイロットにはなれません Photo:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。

プロジェクト成功の秘訣は
「原理原則」の浸透

 20年ほど前のことだ。企業向けに、新しいタイプの社内ネットワークサービスを構築するプロジェクトのリーダーを務めたことがある。

 新しいタイプというのは、今で言う「クラウド」を先取りするものだ。いわばインターネットと同じような使い勝手でイントラネットが使えると言えば、わかりやすいだろうか。

 基本コンセプトを、ネットワークは「雲」のようなものだと、顧客や自社内では説明していた。顧客企業の各地の支社・拠点から、最寄りのアクセスポイントを経由して「雲」につながれば、他のすべての支社・拠点と一度に通信できる、といったイメージだ。

 当時は前例のないサービス提供だけに、提供する自社の側の負担も小さくなかった。そのため、現場にはサービスそのものに反対する声すらあった。

 そんな状態だったので、プロジェクトもすんなりとは進まない。細部について現場の意見が分かれるケースが、幾度も発生した。

 そのたびにリーダーである私の判断が求められたわけだが、そんな時はたいてい「雲ですから、○○は××のようにすべきです」というように指示を出していた。

 そんなやりとりが繰り返されると、尋ねる側も「雲ですから、△△でいいんですよね?」と確認するようになってくる。それに対する私の答えは「雲ですから、それでいきましょう」だ。

 こうして「雲」という言葉が、はやり言葉のように浸透していった。

 それは、「ネットワークは『雲』」という基本コンセプトが、プロジェクト進行上のさまざまな判断における「原理原則」として現場で十分に共有されたことを意味する。