京急電鉄は今年10月から京急空港線の加算運賃引き下げを発表した。JR東日本の積極攻勢に先手を打ち、加算運賃を120円も値下げすることを発表した京急。しかし、羽田空港アクセス線が狙う客は、むしろリムジンバスの乗客ではないだろうか Photo:PIXTA

右肩上がりで増え続ける羽田空港利用者を取り込むべく、JR東日本と京急電鉄の戦いがいよいよヒートアップしてきた。JR東は2029年にも「羽田空港アクセス線」を開業する予定だが、JR東が狙うのは京急利用者ではなく、もっと高運賃を望めるリムジンバスの乗客ではないだろうか。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

京急vsJR東日本の戦いが
一段とヒートアップ

 羽田空港は国際線発着枠の拡大に伴い、第2ターミナルで国際線の取り扱いを開始することから、2020年3月に国際線ターミナルを第3ターミナルに改称すると発表した。あわせて京急電鉄は国際線ターミナル駅を「第3ターミナル駅」、国内線ターミナル駅を「第1・第2ターミナル駅」に変更、東京モノレールの駅名も従来の「○○ビル駅」から「第1ターミナル駅」「第2ターミナル駅」「第3ターミナル駅」に統一する。

 羽田空港の旅客数は2010年の再国際化以降、右肩上がりで増加中だ。1日平均旅客数は2010年の17万人(うち国際線1.3万人)から、2017年は23.8万人(同4.7万人)に達している。今後も増加する空港利用者を取り込もうと、空港アクセスの主導権争いがにわかにヒートアップしはじめた。

 羽田空港アクセスを巡る戦いは、1998年の京急電鉄空港線ターミナルビル乗り入れから始まった。東京モノレールの輸送人員はピークから3割減少、シェアは7割から4割弱まで低下した。経営が悪化した東京モノレールは2002年にJR東日本の傘下に入り、接続する浜松町駅の乗り換え改札整備、Suica導入、快速運転開始など競争力向上に努めたが、京急は経営の軸足を三浦半島から空港輸送に移し、ダイヤ改正のたびに「エアポート快特」「エアポート急行」を増発。モノレールのシェアをじりじりと奪っていった。

 2013年、ここに突如浮上したのが、JR東日本の「羽田空港アクセス線」だ。休止中の貨物線と、既存路線、新設トンネルを組み合わせ、東京駅・新宿駅・新木場駅の各方面から羽田空港まで直通列車を走らせるという壮大な構想である。今年2月15日、JR東日本は環境影響評価手続き(環境アセスメント)の実施に向けた準備に着手したと発表。最短で2029年頃の開業に向けて準備は着々と進行している(環境アセスメントの位置づけについては「横浜市営地下鉄延伸、2030年開業でもあまり時間がない理由」を参照)。

 すると翌日の2月16日、今度は京急電鉄が、今年10月から京急空港線の加算運賃を引き下げると発表した。これにより、品川~羽田空港国内線ターミナル駅間の運賃は、ICカードで407円から287円に120円も値下げされることになる。