ハウステンボスハウステンボスの入場者数が頭打ちとなった。3月1日からは価格の安い「散策チケット」がなくなり、シニア客の減少も懸念される。集客力の強化が喫緊の課題だ Photo by Wakako Otsubo

 唐突な“婚約解消”だった。2010年に旅行会社のエイチ・アイ・エスの傘下に入って再建を果たしたテーマパークのハウステンボス(長崎県佐世保市)と、中国の投資会社、復星集団との資本提携交渉が突如打ち切られたのだ。ハウステンボスは復星集団の出資で中国からの送客を期待でき、同集団はテーマパークの運営ノウハウを吸収できる。まさにウィンウィンの提携話だった。

 ところが、この破談に地元の佐世保市の政財界は胸をなで下ろしているという。なぜか。

 かねて佐世保市は、ハウステンボス地区へのIR(カジノを含む統合型リゾート)誘致に注力してきた。ところが昨年12月、先述の資本提携話が持ち上がる。もし同集団からハウステンボスへの24.9%の出資が実現すれば、エイチ・アイ・エスに次ぐ第2位の株主になる。同集団から取締役も1人受け入れる態勢と報じられ、佐世保市の政財界には、「中国資本が入ることで、ハウステンボスと佐世保市との間に溝ができないか」といった警戒感が少なからずあったようだ。

 こうした地元の懸念が交渉の打ち切りにどの程度影響したのかは不明だが、両社ともその理由については明言を避けている。中国では最近、当局が資金の海外流出を厳しく監視しており、出資金額が折り合わなかったのではないかとの見方もある。

打開策はLCC参入?

 他方、ハウステンボスにとって今回の破談は痛い。そもそも同社が復星集団の出資を検討したのは、入場者数が頭打ちになっていたからだ。18年9月期の入場者数は前年同期比5.5%減の272万人だった。「九州の人口が減少してきたことが背景にある」と澤田秀雄社長は説明する。交通の便が悪いこともあり、外国人入場者数は18万4000人と、全体の7%にも満たない。復星集団が提案した中国からの20万人の送客は、ハウステンボスにとっては喉から手が出るほど欲しかったはずだ。

 復星集団との提携話が立ち消えた今、澤田社長は次に何を仕掛けるのか。その一つがLCC(格安航空会社)だ。現に澤田社長は、本誌12月29日・1月5日合併号において「スカイマーク(1996年に澤田社長が創業)に始まり、タイでも航空ビジネスは失敗したが、諦めてはいない」と発言している。自前での参入ではなく、海外のLCCと提携して参入する可能性もあるだろう。

 LCCで航空運賃を安くすることで集客が増えれば、IR選定においてもアピールできる。法律でIRは日本で3ヵ所しか設置できない。ハウステンボスは世界初の海中カジノ構想などを打ち出しているものの、本命には程遠い。果たして澤田社長は、野望を果たすことができるだろうか。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)