新しいビジネスを生み出すには「クレイジー」が不可欠リコンバレーだと「クレイジー」というのは褒め言葉そのものだ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

レビュー

 これは「世界が欲しがる会社」を作り上げるまでの3年間の記録だ。

 本書『クレイジーで行こう! グーグルとスタンフォードが認めた男、「水道管」に挑む』の著者の加藤崇氏は、人工知能で水道配管の更新投資を最適化するベンチャー「フラクタ(Fracta, Inc.)」のCEOを務めている。フラクタはアメリカで膨大な水道配管関連のデータを取得し、データを解析するソフトウェアを作って売っている会社だ。アメリカの上水道配管システムは2050年までに、100兆円分の水道配管を交換しなければならないとされており、ここを効率化することには極めて大きなポテンシャルがある。だが起業の常として、そこまでの道のりはけっして平坦な道ではなかったという。

 そもそも著者は当初、石油・ガス産業をターゲットに、ロボット点検サービスを展開しようと考えていた。その後は水道配管にターゲットを移すのだが、そこで気づいてしまう。ロボットというハードウェアを売るよりも、上水道配管の劣化予測に関する分析ソフトウェアを売ったほうが、筋のよい選択ということに。これは「日本のロボット技術をアメリカに売り込む」という志をもっていた著者にとっては苦渋の決断であった。だがこのビジネスモデルの切り替えが功を奏し、2018年5月には水処理の世界的大手企業との資本業務提携も発表している。