ニュージーランド銃乱射で考える「在日外国人に生活保護は必要か」ニュージーランドのモスクで発生した銃乱射事件は、日本にとって対岸の火事ではない。外国人が日本の生活保護を食い荒らす、といった脅威論は実際にあるからだ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

ニュージーランド銃乱射で考えた
誤解が多い「外国人と生活保護」

 3月15日、ニュージーランドのクライストチャーチにあるモスクで銃乱射事件が発生し、50人が死亡した。容疑者は28歳になる白人至上主義のオーストラリア人男性で、犯行の様子をインターネット中継していた。また容疑者は、70ページを超える犯行声明の中で、移民の脅威を強調していた。ニュージーランド首相は、移民を排斥する考えを断じて認めない姿勢を示し、同国では銃を返納する国民が増えているという。

 移民脅威論と、結局は自分の見たいものだけを見る道具になりがちなインターネットやSNS、そして銃のうち、どれが原因であるとも言い切れない事件だ。しかし銃がなければ、少なくとも銃乱射は起こらなかった。

 4月から技能実習制度の拡大を控えた日本にとっても、対岸の火事ではない。2018年6月、日本には約264万人の外国人が在留していた。この総人数は、京都府の全人口(約260万人)を超える。

「外国人が増えると、外国人の生活保護が増えるのではないか」という懸念は、しばしば語られるが、おそらく現実のものとはならない。生活保護の対象となる外国人は、「永住者」「永住者の日本人配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」と、戦前の日本に統治されていた国々の国民で、戦前から日本に在留していた人々である「特別永住者」および子孫に限定されている。2018年6月、生活保護の申請資格がある外国人の合計は、約145万人だった。日本人約1億2000万人の1%強に過ぎない。

 このうち、国際情勢と関係して話題になる「特別永住者」は、制度が創設された1991年には約70万人だったが、その後は減少する一方で、2017年には約33万人となっている。高齢化・単身化も進んでおり、今後、増加する可能性は極めて薄い。