世界中でブームになっているノート術「バレットジャーナル」。でも、なんだか難しそう、面倒くさそう、と思う人もいるかもしれない。また、日本ではイラストやマスキングテープを使ったノートのデコレーションを行う人が多いことから、これまで敬遠していた男性もいるはずだ。しかし、発案者のライダー・キャロル氏が実践するのは極めてシンプルなスタイル。誰でも今すぐ始められ、力強い効果を実感できる。本連載では、ライダー氏が書き下ろした初の公式ガイド『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』の刊行を記念して、著名なバレットジャーナル・ユーザーや専門家たちに寄稿してもらう。今回は、『文房具屋さん大賞』審査員長も務める高木芳紀氏が、一見敷居が高いように見えるバレットジャーナルの簡単な始め方について語る。長年、文具業界に携わりながらも、手帳の書き方に無頓着だった高木氏を大きく変えた、バレットジャーナルの魅力とは? ズボラだという高木氏を、理想のノートを作るまで駆り立てたその威力とは?

手帳に無頓着だったおじさんが<br />理想のノートまで作ってしまったノート術
手帳に無頓着だったおじさんが<br />理想のノートまで作ってしまったノート術高木芳紀(たかぎ・よしのり)
株式会社ノウト代表取締役
1971年名古屋生まれ。金沢大学卒業後に興和株式会社に入社、繊維、IT、光学機器の営業職を経験。その後、興和時代の先輩の家業である渋谷の老舗文具店つばめやにて通販部門を中心に担当。2017年にのれん分けの形でノベルティ部門を継承、株式会社ノウト(ノベルティ研究所)を設立。2012年より文具朝活会を継続、だいたひかるさんと年4回文具祭りを主催。扶桑社『文房具屋さん大賞』審査員長。

 もう15年以上も文房具関係の仕事をしていながら、わたくしはまったく手帳に無頓着な人間でした。社会人として、とりあえずスケジュールだけはしっかり管理する必要があったので、見た目の良さで買ったモレスキンのウィークリーノートブックを使い続けてはいたものの、そこにはほぼスケジュールしか書いておらず、手帳としての役割はそこで止まっていました。

 というのも、「人はそれぞれ仕事もライフスタイルも違う。まして趣味嗜好も全員異なるわけで、この手帳がいいとか、あの手帳術が一番とか、そういう議論自体がナンセンス」という持論があったから(手帳業界のみなさん、ごめんなさい!)。

 ですから、自分に合ったノート術を考えながらも、結局、日々の仕事はいろんなノートに情報を書き散らしているような状態が続いていました。特に工夫するなどなし。例えば、業務上のToDoリストに関しては、もっぱら付箋をパソコンモニターの縁に貼るという、よくあるタイプ(?)の人間でありました。

バレットジャーナルは
文字しか書けない人でも力強く前進できるツール

 そんな中、2017年頃になって、「バレットジャーナル」という言葉をよく聞くようになりました。なんでも、日付の入っていないノートに、自由に手帳をデザインしていくものらしいと初めのうちは理解していました。なぜなら、カリグラフィーやイラスト、マステなどでデコった、かわいくてきれいなノート群が、インスタグラムにアップされているのを最初に見てしまったから。

 いわば、圧倒的な文具女子の世界であり、絵心もセンスもないわたくしは、「おっさんには関係ないもの」というイメージを持ってしまったのです。

 しかし、バレットジャーナルに関する情報が増えるにつれ、その解釈はちょっと違うというのがわかってきました。

 その本質は、デコってきれいなノートを仕上げることではなく、いたってシンプルな仕事術、むしろ文字しか書けないビジネスマンが、頭の中を整理しながら力強く前進するためのツールであると(デコレーションはモチベーションを上げるためのオマケだったのです!)。