年収が100万円アップしても
手取りは64万円しかアップしない?!

会社員への「隠れ増税」が、高収入層から始まっているPhoto:PIXTA

 新年度の4月を迎え、昇進などに伴い給与がアップする人もいることだろう。うれしい気持ちでいっぱいの中、水を差すようで恐縮だが、額面収入がアップしたとしても、昇給した金額と同じだけ「手取り収入」が増えるわけではないので注意が必要だ。

 額面収入から所得税・住民税と社会保険料を差し引いたものが「手取り収入」で、実際に使えるお金のことだ。FPの教科書には「可処分所得」と表記されている。

 たとえば昨年の年収700万円の人が、管理職に昇格して今年の年収が100万円アップするとしよう(税務上の扶養家族は妻)。額面年収700万円の手取りは537万円、800万円の手取りは601万円だ。

 額面100万円アップに対して、手取りは64万円のアップに過ぎない。えっ、64万円!と目を疑うのではないだろうか。

 同じだけ手取りが増えないカラクリは、所得税の税率アップによるもの。年収がアップすることで、累進課税である所得税の税率が上がるため、税金の負担が重くなり、手取りを押し下げている。

 このように手取りを知らずに額面年収だけで家計プランを立てると、絵に描いた餅になる可能性が大。手取り計算は重要なのだ。

 FPになって数年経った頃、手取りが大きく減る制度改正が相次ぎ、「これからは手取りが減ることはあっても、増えることはないだろうな」と思い、2002年から毎年1月に年収・属性別のパターン別に手取りを試算し、一覧表にまとめている。当コラムでも1月に「今年の手取りはこうなる!」と題して試算結果をお伝えしている。

 数年前に「そろそろ試算データが蓄積してきたのでグラフにしてみよう」とグラフ化したのが次の図だ。