文系だから読めないが通用する時代ではなく、「ビジネススキル」としての「数字を読む能力」は求められています。ましてや、経営者は財務戦略を敷くにあたり、「数字が読めない」では、通用しません。新刊『財務諸表は三角でわかる 数字の読めない社長の定番質問に答えた財務の基本と実践』から財務戦略の基本をわかりやすく紹介。先代から事業を引き継いだ2代目社長の質問に答えていく形ですすめます。

(2代目社長からの質問)
「そうですか。前回の内容で少し厳しい状況になっているのがよくわかりました。きちんと利益を出さないと銀行との取引条件はどんどん悪くなりそうですね。怖いので早く借金は返したいのですが……」

 お金がないと会社は潰れるわけですから、手元の資金は多ければ多いほうがよいです。手元の資金で置いておく限り、借金はいつでも返せますから、いくらあっても問題ありません。

 まず、借金を理解し、むやみに怖がらないようにしましょう。

 借金は大きく2種類に分けられます。「設備投資のための借入」「運転資金のための借入」です。

 設備投資のための借入は、出店や設備など大きな投資に紐づいて借りるもので、返済期間もその投資を回収する期間に見合うよう長期に設定するのが一般的です。

 この設備投資のための借入は、投資に合わせて確実に行うべきです。

 今回の機械への投資600万円も、きちんと借入600万円の増加でまかなっているので正しい判断です。

 一方、運転資金のための借入の適正額ですが、まず先ほどから出ているいわゆる「運転資金」部分は事業に必要な資金ですから、借りておくべきです。

 問題は、会社が必要とする運転資金以上に銀行が貸してくれる場合です。

 会社を守ることを考えると、大口取引先の撤退など、想定しうる最悪の事態が起きたとして事業を回復させるまでにどれくらいの時間がかかるか、その期間の損失をまかなえるお金があるのが理想です。

 業種業態によって回復までにかかる時間はまったく違うので、現実的ではない金額になってしまう会社もあるかもしれません。その場合は、銀行が貸してくれる限度額まで借りて最大限お金を持っておく、という財務戦略をとるべきです。

 銀行はお金を貸したいものの、財務状況や他行からの借入額、年商に対する借入額などを勘案しながら提案してきます。

 借入過多の状態になるとそれ以上借りられなくなるので、そこまでは借りてお金を最大限手元に残しておくべきです。