ウクライナの新大統領になったコメディアンのゼレンスキー氏とは、何者でしょうか。Photo:REUTERS/AFLO

ウクライナで21日に行われた大統領選挙の決選投票は、政治経験の全くない41才のウォロディミル・ゼレンスキー氏と現職のペトロ・ポロシェンコ大統領による対決となったが、決選投票前に複数のメディアが伝えた通り、ゼレンスキー氏の圧勝という結果に終わった。2014年に親ロシア派のヤヌコヴィッチ政権が市民デモによって崩壊し、それから間もなくして行われた選挙で大統領に選ばれたポロシェンコ氏だが、就任時に期待されていた経済再建や汚職の撲滅を成功させたとは言えず、多くのウクライナ人有権者が不満を抱えていた。新しく大統領に選ばれたゼレンスキー氏は国内の人気テレビドラマで大統領を演じてきた喜劇役者だが、75%近くの票を得た彼の圧勝は、有権者が抱く希望なのか、それとも諦めなのか。(ジャーナリスト 仲野博文)

39人が立候補する乱戦
1、2位による決選投票で決着

 もともと大統領選挙は3月31日に実施されたが、実に39人が立候補する異例の展開になった。ゼレンスキー氏やポロシェンコ氏以外にも、元首相のユリヤ・ティモシェンコ氏や元副首相のユーリ・ボイコ氏らが次期大統領の座を狙って出馬。先月31日の選挙ではゼレンスキー氏が約30.2%の得票率でトップを獲得、ポロシェンコ氏は15.9%で2位という結果に終わった。ウクライナの法律では、大統領選挙で得票率の過半数を制する候補者が出なかった場合は、2位につけた候補と決選投票を行わなければならず、今月21日にゼレンスキー氏とポロシェンコ氏による決選投票が行われることになったのだ。

 決選投票とはいうものの、過去5年間のポロシェンコ体制に失望した有権者は多く、さらに1回目の投票でゼレンスキー氏がダブルスコアに近い形でポロシェンコ氏に勝利していたため、最終的にゼレンスキー氏が勝利すると信じて疑う市民が多かったようだ。また、決選投票が近づくにつれて、各報道機関が支持率調査の結果を発表していったが、異なる支持率調査でも数字はそれほど大きく変わらず、平均するとゼレンスキー氏が約70%、ポロシェンコ氏が約30%という図式であった。