日比谷花壇が直営店で展開する母の日参りコーナー日比谷花壇が直営店で展開する母の日参りコーナー。10年ほど前、日本香堂の営業マンが「近頃の母の日は高価な供花がよく売れる」という情報をキャッチしたのが、「母の日参り」の原点だった

近年、母の日の前後に顕著に増えているのが「墓参り」。実母を亡くした中高年が増え、亡き母をしのぶ「母の日参り」が日本の新たな習慣として定着しつつあるのだ。「母の日」はそもそも、ある米国人女性の「亡き母をしのぶ」ことをルーツとして、記念日として定着したもの。つまり、母の日参りは「母の日」の原点返りともいえる現象である。

実母を亡くした人が増えて
「母の日参り」が日本人の新習慣に

 今年も、今週末の日曜日に母の日を迎える。昭和の頃、母の日といえば、カーネーションが定番の贈り物だった。今年50歳になる筆者も、小学生の頃、母に毎年カーネーションを贈ったものだ。ただ、母の日前になると価格が突如として高騰。1ヵ月分の小遣いをはたいても、わずか1本しか買えず、それでも母が笑顔で受け取ってくれたことを昨日のことのように覚えている。ただし、今では贈り物の一番人気はスイーツというから、時代も変わった。

 だが、一方で近年、ゴールデンウィークから母の日にかけて顕著になっていることがある。それが、墓や仏壇に供える供花の売り上げが増えるという意外な現象。理由は、亡き母に会いに行く「母の日参り」が、日本人の間で“新習慣”として定着しつつあるからだ。

「母の日参り」という言葉を提唱した、線香大手の日本香堂は、「母の日に贈り物をする習慣が始まったのは1960年代。以来、幼い頃からずっと母の日の贈り物文化に慣れ親しんできた“第一世代”が、実母を失うライフステージを迎えている。贈り物をできなくなった未充足感を、母の日参りを行うことによって埋めているのでは」と説明する。

 実際、同社が2018年に実施した調査では、GWから母の日の時期にかけて墓参している40代以上の中高年は10人に1人と、10年前の約1.7倍に増えているという。また、2018年4~5月にSNSで「母の日参り」に関連した投稿が1000件を突破。母の日参りの実践者は着実に増加傾向を示している。

 日本の高齢化率が高まっていることも背景の一つだ。国の統計によると、実母と死別した人口は、1999年の3000万人余りに対し、2014年は3500万人超と、この15年で約16%も増加している。長生きする人が増えることで、“母ロス”をする人口が年々積み上がり、必然的に母の日参りの人口も上乗せされているのだ。