塩Photo:PIXTA

 血圧、心血管疾患と関係が深いミネラルといえばナトリウム(Na)とカリウム(K)である。

 簡単にいうとNa、つまり塩分過多では血圧が上昇し、Kの摂取量が多いと血圧は下がる。世界保健機関(WHO)は1日の摂取基準としてNa2.0グラム未満、K3.5グラム以上を推奨している。

 カナダ・マクマスター大学の研究グループは、この数値の妥当性を検討する大規模調査を実施。

 ミネラルの「尿中排せつ量」を摂取量の代替データとして、18ヵ国(高/中/低所得国)の都市部と農村部の住民10万3570人(年齢35~70歳)から、早朝の空腹時に尿を採取。NaとKの排せつ量と心血管死、脳卒中、心筋梗塞、心不全との関係を解析。41.8%が中国からの参加者だった。

 解析に際しては、Na排せつ量を低(3グラム/日未満)、中(3~5グラム/日)、高(5グラム/日以上)の三つに、K排せつ量を高(2.1グラム/日以上)、低(2.1グラム/日未満)の二つに分け、六つの組み合わせで比較している。

 その結果、NaとKの尿中排せつ量の平均値は4.93グラム/日、2.12グラム/日だった。追跡期間中8.2年の時点で、7884人が死亡、または心血管疾患を発症している。

 Na値をみると「高値」および「低値」集団で死亡と心血管疾患リスクが上昇し、いわゆるJカーブ現象が認められた。一方、K値では反比例の関連が示された。

 6グループ間で、最もリスクが低い「中Na/高K群」を1とした場合、最も心血管疾患リスクが高かったのは、「低Na/低K群」(1.23倍)、次いで「高Na/低K群」(1.21倍)、「低Na/高K群」(1.19倍)、「高Na/高K群」と「中Na/低K群」が1.10倍だった。

 どうやら心血管疾患リスクを左右する鍵は「カリウム」で、K排せつ量(摂取量)が増えるほど塩分過多の弊害を緩和するらしい。

 ちなみにWHOの摂取基準を満たした参加者は、わずか0.002%。研究者はWHO基準の実行性に疑問を呈している。

 カリウムが豊富な食べ物は野菜と豆類、そして海藻類だ。塩辛い物を食べるときは追加しよう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)