2桁成長を続ける日本のEC(Electronic Commerce、電子商取引)市場。だが、民間消費全体に占める割合はわずか2.46%と、拡大の余地は大きい。多くの企業が参入する中で成功する秘訣は何か? ECビジネスに詳しい東京工科大学メディア学部の進藤美希准教授に聞いた。

──日本のBtoC EC(以下、EC)の市場規模は2010年が前年比16.3%増の7.8兆円と大きく伸びています。成長の理由は何でしょうか。 

進藤美希
東京工科大学 メディア学部 准教授
青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科 博士後期課程修了。日本電信電話(NTT)などを経て現職。主な研究分野はインターネットマーケティング、コミュニティ論、メディア論、ビジネスモデル論。Photo by Kazuhiko Kurabe

進藤 まず基本的な背景として、インターネットやスマートフォン、携帯電話の利用者の増加が挙げられます。

   総務省の『平成23年版情報通信白書』によれば、10年末時点のインターネット利用者数は9462万人、インターネット対応携帯電話の契約件数は12年4月末時点で1億0299万件(電気通信事業者協会調べ)と、国民の大半がインターネットにアクセスできる環境がすでに整っているのです。

  さらに、財団法人インターネット協会の『インターネット白書2011』によると、ネットの利用目的は、1位が「商品・サービスの情報収集」、2位が「ネットショッピング」となっています。

──ニュースを読んだり、メールを送受信したりするよりも、買い物を目的にネットを利用する人のほうが多いのですね。

進藤 しかも興味深いことに、ECの利用者は、中・高年層にも広がっています。経済産業省の「消費者購買動向調査」(10年4月)によると、ネットショッピング利用者は男女ともに40代が最も多いのです。

   40代は仕事や子育て、介護に忙しい人が多いので、店に行かなくても、深夜でも買い物ができるネット通販を活用しているのでしょう。そうした利便性への認知が高まっていることも、市場拡大の要因だと思います。