イニエスタ,トーレスイニエスタとトーレスというレジェンド投入に沸いた両チーム。経営状態には大きな差が生まれたようだ Photo:JIJI

Jリーグからこのほど開示された、2018年度のクラブ決算で対照的な数字が弾き出された。ともに昨シーズン途中に元スペイン代表の超大物外国籍選手、MFアンドレス・イニエスタとFWフェルナンド・トーレスを獲得し、国内外から大きな注目を集めたヴィッセル神戸とサガン鳥栖。日本円にして億単位の高額年俸が発生した中で前者はJ1クラブの中で最大の黒字へV字回復し、後者は同最大の赤字へ転落――というコントラストが描かれた背景を探った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

ヴィッセル神戸は10億円超の黒字
営業収益はJリーグ歴代最高額に

 稀代の司令塔として一時代を築いたアンドレス・イニエスタ。そして、老若男女から「神の子」として愛されたフェルナンド・トーレス。昨シーズン途中に元スペイン代表のレジェンドたちを獲得したヴィッセル神戸とサガン鳥栖が、2018年度決算で対照的な数字を弾き出した。

 Jリーグからこのほど開示された2018年度の経営情報。企業活動の最終的な成果を示す「当期純利益」で、ヴィッセルは10億5200万円もの黒字を計上。一方のサガンは5億8100万円と4期ぶりにして、J1に昇格した2012年度以降では最高額となる赤字に転落した。ともに2018シーズンを戦ったJ1勢で、3月決算の3クラブを除く15クラブの中では最大の数字となっている。

 イニエスタとトーレスの推定年俸は、日本円にしてそれぞれ32億5000万円と8億円。突出した数字は、もちろん2018年度決算に組み込まれる。それでいて「当期純利益」が対照的な数字を示したのはなぜなのか。両クラブのスキームを探っていくと、大きな違いがあることが分かる。

 まずはイニエスタを擁するヴィッセル。2017年度決算で「当期純利益」は1億5500万円の赤字を計上し、経営の体力を示すバロメーターとなる「純資産」も、J1では最少となる800万円に目減りしていた。4期ぶりに赤字へ転落したところへ、年俸の桁がひとつ多いイニエスタが加わった。

 年俸などの総額となる「チーム人件費」が、クラブ経営をさらに圧迫。2018年度決算で800万円を超える赤字を計上すれば「純資産」がマイナスとなり、いわゆる債務超過に陥る。その場合は規約によってクラブライセンスを剥奪され、J1およびJ2からの退会を余儀なくされる。