フロンティア市場16ヵ国の公的債務のGDP比率

66%(2018年末) 出所:オックスフォード・エコノミクス

 世界的なカネ余りを背景に、投資家は新興市場に飽き足りず、経済や金融市場が十分に発達していないフロンティア市場と呼ばれる発展途上国への投資を急拡大させている。アルゼンチン、ベトナム、バングラデシュ、ウクライナなど代表的なフロンティア市場16ヵ国の公的債務のGDP比率は、2011年の46%から、18年末には66%に達した。

 問題は、これらの海外投資の多くが外貨建ての債券投資というかたちを取っており、金融市場での変化に脆弱であることだ。市場で何かショックが起きれば、すぐに資金逃避が始まり、経済をさらに混乱させる可能性がある。また、海外債務のうち、生産的な投資に回っているものの比率は11年よりむしろ低下している。海外投資がフロンティア経済の成長につながっていない面もある。

 さらに懸念されるのが、中国からの融資だ。中国の習近平国家主席は、中国とアフリカ、ヨーロッパをつなぐ巨大経済圏構想「一帯一路」の実現に力を入れており、フロンティア市場への融資を拡大させている。その実態は不透明で、前述した公的債務のデータには含まれていないものも多い。

 中国の対外投資をカバーする米国シンクタンクのデータによると、16ヵ国へのプロジェクトファイナンスは09年から26倍も拡大し、2800億ドルに達している。そして、その約半分がパキスタン、ナイジェリア、アルゼンチンの3ヵ国に集中している。

 こうした中国の融資は多くの場合、公的資産などへの担保条項が付いており、通常の債券所有者より優先的に弁済される構造になっている。スリランカやケニアでは、こうしたかたちで主要港湾に中国が融資しており、中国の存在感が際立ち始めた。

 フロンティア国の中には、中国からの不透明な債務があるために、IMF(国際通貨基金)の支援を受けられなかったり、調査に時間がかかったりなどの問題が起きている所がある。

 見方を変えれば、フロンティア市場は、米国が主導する国際金融システムへの中国の挑戦の最前線ともいえる。

(オックスフォード・エコノミクス在日代表 長井滋人)