「暗号資産」が導く近未来の世界、投機の対象と考えているのは日本だけ?日本では投機の対象とみられがちな暗号資産(旧称:仮想通貨)だが、世界では既存業界を巻き込む形で活用事例が着実に増えている(写真はイメージです) Photo:PIXTA

価格高騰とスキャンダルで
暗号資産の興味が薄れた日本

 わずか2年前(2017年)、日本では官民挙げて暗号資産(当時の名称は仮想通貨)を推進する動きが強まる中、ビットコインをはじめとする暗号資産価格が上昇。空前とも言える暗号資産(仮想通貨)ブームが日本に訪れた。しかし翌2018年1月、コインチェックから580億円相当額の暗号資産が流出し、同年9月にはザイフから67億円相当額が流出。こうしたスキャンダルを背景に、日本ではわずか1年足らずで、暗号資産に対する見方が変わった。行政当局の監督姿勢は厳格化。メディアで取り上げられることもすっかり少なくなった。

 ビットコイン価格は、今年4月以降、上昇基調で推移しており、日本でも暗号資産が(再び)話題になりつつあるが、2年前のような注目を集めているわけではない。日本において暗号資産は、一時期の投資ブームの狂騒を招いただけの徒花だったようにみえる。

 しかし日本を除く世界各国を俯瞰すると、暗号資産に対する見方も変わってくる。たとえば、サンフランシスコに本社を持つブロックチェーン関連のベンチャー企業では、従業員が報酬の一部を暗号資産で受け取ることができる。日本人スタッフは、法規制を理由に暗号資産を選ぶことができないが、中国人やフィリピン人スタッフは、多くが報酬の一部を暗号資産で受け取っているという。

 中国は、他国に比べ資本規制が厳しく、国内外の資金移動が厳しく取り締まられている。フィリピンは、出稼ぎ大国として知られているように、国外で働くフィリピン人は、フィリピンに向けて多額の資金を送っている。中国人、フィリピン人ともに、資金移動に関する規制がかかりにくく、送金コストが低い暗号資産を選択する合理的理由を持つ。

 日本でも外国人観光客の間では、暗号資産のニーズが強まっているように感じる。卑近な例で恐縮だが、筆者は東京・銀座にて、スマホ片手に店を探している外国人観光客に遭遇した。どこに行きたいのかと声をかけると、あるカフェを探しているという。筆者はWi-Fiが繋がる場所を探していると思ったのだが、彼らは「No, Bitcoin!」と言う。じつは、そのカフェは一時期、ビットコインで支払いができ、かつ両替ATMを設置していることで話題になった店だった。彼らは、南米ボリビアからの観光客で、保有しているビットコインを日本円に両替したかったようだ。

 日本では、2年前の騒ぎすぎとも言えるブームと、その後のスキャンダルで暗号資産に対する興味が減退している。デフレなどにより日本円に対する国内需要が強いこともあり、暗号資産は、投資(または投機)の対象とみなされがちだ。このため日本における暗号資産に対する理解は、他国に比べて歪められたもののように思えるが、これは日本で生活する方にとって不幸なことだ。