JR四国の特急「いしづち」特急のスピードアップなどの努力はしているものの、自家用車と高速バスに負けっぱなしのJR四国。しかし、そのライバルを取り巻く環境の激変が、JR四国の生き残る道を示している Photo:PIXTA

経営危機が騒がれているJR北海道だが、JR四国も負けず劣らず悲惨な経営状況となっている。モータリゼーションの波にあらがえず、自家用車や高速バスに負けっぱなしのJR四国は果たして、どこに活路を見出せるのだろうか?(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

JR北海道に次ぐ危機
「JR四国問題」とは

 本稿ではこれまで、JR北海道とJR九州の取り組みや課題を複数回にわたって取りあげてきた。国鉄民営化から30年が経過し、自立経営は困難と考えられた北海道、九州、四国のいわゆる「三島会社」のうち、JR九州は完全民営化を達成する一方、JR北海道は深刻な経営危機に陥るなど、明暗がはっきりと分かれる形となっている。そこで今回は、これまで取り上げていなかったもうひとつの三島会社、JR四国の現状について解説したい。

 JR四国はJRグループで最も規模が小さい鉄道事業者だ。9路線からなる総延長855.2キロの路線網は、日本最大の私鉄、近畿日本鉄道(近鉄)の約501キロを大きく上回るものの、2018年度の輸送人員は1日当たり約12.3万人で、これは京浜急行電鉄の10分の1、東京モノレールやゆりかもめと同じくらいの数字である。

 鉄道本体に加え、バスや物品販売、不動産、ホテルなど21の子会社を含めた連結売上高は約498億円で、これは兵庫県の準大手私鉄山陽電気鉄道や、中小私鉄の富士急行を下回る。もちろん規模が大きければいいという単純な話ではないが、内容も厳しいのが実情だ。連結売上高の6割を占める運輸業が132億円の営業損失を計上する一方、関連事業をすべて合計しても23億円しか利益がなく、連結営業損失は114億円にも達している。

 赤字体質は発足から続く慢性的なものだ。民営化した1987年度の営業損失は148億円、バブル景気を追い風に1990年には営業損失を87億円まで減らすが、バブル崩壊で再び赤字が拡大。1996年の運賃値上げ以降は100億円を切る赤字水準で推移してきたが、2010年頃から再び赤字が拡大傾向にある。

 その背景には、四国の人口が1985年をピークに減少していること、バブル崩壊に始まる長期の平成不況と低成長、そして高速道路網の整備という構造的な問題が横たわる。四国の高速道路ネットワークはJR発足以降急速に整備が進み、1987年4月の総延長11キロから、30年間で529キロまで拡大。自家用車と高速バスに乗客を取られっぱなしである。