「働き方改革」が喫緊の課題となっている。そんななか、プレッシャーが増しているのがプレイングマネジャー。個人目標とチーム目標を課せられるうえに、上層部からは「残業削減」を求められ、現場からは「仕事は増えてるのに…」と反発を受ける。そこで、1000社を超える企業で「残業削減」「残業ゼロ」を実現してきた小室淑恵さんに『プレイングマネジャー 「残業ゼロ」の仕事術』をまとめていただいた。本連載では、本書のなかから、プレイングマネジャーが、自分もチームも疲弊せずに成果をあげるノウハウをお伝えしていく。

人を動かすマネジャーは、<br />「お願い」ではなく「提案」をする

他部署や取引先に「お願い」をしてはならない

 職場の「働き方改革」を進めるためには、他部署や取引先の協力を得なければならない局面があります。そして、他部署や取引先の協力を得られるかどうかはマネジャーの力量にかかっていると言っても過言ではありません。

 では、マネジャーはどのように行動すべきなのでしょうか? 私は、大前提として意識しておくべきなのは、他部署や取引先に「お願い」をしてはならない、と考えています。協力を「お願い」するのではなく、お互いにとってWin−Winの関係になる「提案」をする。これこそが、相手の協力を引き出すうえで、とても大切だからです。

 それをうまくやり遂げたマネジャーのエピソードをご紹介しましょう。
 そのマネジャーは、ある食品会社の営業チームのプレイングマネジャーでした。営業部門では、取引先のほうが立場が強く、その要望に応えるために非効率的な働き方を余儀なくされているケースが多いのですが、見事にそのカベを乗り越えたのです。

 彼のチームが真っ先に取り組んだ「働き方改革」は、営業先を訪問するための移動時間を短縮することでした。そのために、いくつかの手立てを講じましたが、最も効果的だったのは、「系列別の担当制」から「エリア別の担当制」に切り替えたことです(連載第37回参照)。

  従来は、スーパーなどの系列別に営業に回っていたため、移動距離が長く非効率だったのですが、エリア別担当にすることで、移動効率が劇的に高まったからです。その結果、残業時間が減るとともに、チーム全体の売上も伸び始めたのです。

 ところが、さらにメンバーの「働き方」の分析を進めると、ある問題点が明らかになりました。メンバーは、外回りを終えて夕方に帰社するのですが、ある事務作業が膨大なために、帰社時間を早めに設定する必要があったのです。もう少し帰社時間を遅らせることができれば、その分訪問先を増やすことができ、営業効率を高めることができるはずなのに、それができない状況にあったわけです。