「自前主義」の限界が来たPhoto by Masato Kato

メガバンクは転換期にある。金融緩和によって本業不振に陥り、同時にデジタル化の波が押し寄せたことで構造改革を強いられているからだ。そんな中、みずほフィナンシャルグループは5年に及ぶ経営計画を打ち出した。計画を実行する上で、切っても切れないテクノロジーの進化とどう向き合うのか。坂井辰史社長に聞いた。 (聞き手/ダイヤモンド編集部 田上貴大)

――今年から新たに「5ヵ年経営計画」を掲げ、その中で次世代金融に転換すると目標に据えました。その背景として、デジタルテクノロジーの進展に伴う顧客ニーズの変化を原因の一つに挙げています。こうしたテクノロジーとどう向き合い、どう自社に取り込んでいくつもりでしょうか。

 これは大きなテーマであり、本当に重要なものだと思って改めて頭の中を整理してきました。経営的な目線で考えると、大事なことが三つあると思っています。

 一つ目ですが、今回私たちは「次世代金融への転換」を掲げています。その中で、「バックキャスティング(未来から逆算して現在を考える手法)」で物事を見ています。デジタライゼーションや少子高齢化が進む中で、経済や社会、そして一人ひとりの生活の在り方は構造的に変わっていく。そこで、必ず「こうなる」というものはないけれども、新しい時代における生活の在り方や産業構造からバックキャスティングし、今の戦略を考えています。

 今回、あえて経営計画を(一般的な3年ではなく)5年という期間で設定しました。正直なところ、計画は3年でも立てられますし、その方がマネージはしやすい。しかし、3年という期間だと現在からの延長でいくらでもできてしまう。今の数字を見て、ああだこうだ議論すれば計画の数字はできるが、それだけでは足りない。次世代金融に転換するためにいったんこの流れを断ち切り、バックキャスティングで物事を考えるという思いで、あえて5年間という世界を一度つくったわけです。

 二つ目は、デジタライゼーションやテクノロジーがもたらす大きなインパクトについてです。これが今の私たちのビジネスにとってかなりディスラプティブ(破壊的)なことを起こすかもしれない、という前提で考えることですね。

 これは逆に言うと、現実は定量的な検証こそ精緻に行いますが、戦略を遂行する上である程度の「カニバリ」は気にしない、カニバリをいとわないというスタンスが、経営としてものすごく大事だと思っています。