地銀地方銀行が苦境に追い込まれているのは、フィンテック、人口減少といった理由だけではありません Photo:PIXTA

 地方銀行の苦境が伝えられ、政府も地銀の再編等を真剣に検討しはじめたもようだ。週刊ダイヤモンドが「銀行危険度ランキング」といった特集を組むなど、世の中の関心も高まりつつある。

 地銀の苦境というと、「フィンテックに負けてしまう」「地方の人口が減少して顧客が減ってしまう」といった理由が思いつくが、それは将来にわたる長期的な脅威である。

 現在、多くの地銀が苦しんでいる最大の理由は、「ゼロ成長」と「ゼロ金利」にある。これはメガバンクについても同様であるが、海外で稼げるメガバンクと比べて地銀の方が一層苦しい、というわけである。

ゼロ成長だと縮む地銀のビジネス

 ゼロ成長とは、日本経済の規模が一定ということである。これは、一般企業にとって、「売り上げも利益も昨年並み」を意味する。伸びる企業も衰退する企業もあるが、平均してみれば、ということで考えよう。

 ところが、銀行にとってはそう楽観できるものではない。一般企業からの返済によって融資残高が減っていってしまうからだ。

 一般企業は、ゼロ成長でもプラスの利益を稼いでいる。利益の金額が前年と比べて増えていないだけである。そして、利益は一部が配当に回るが、残りは銀行借り入れの返済に回ってしまう。

 経済が成長していれば、企業は利益を設備投資に使うであろうから、銀行借入の返済には回されないだろうし、さらには銀行借り入れが増加する可能性もある。しかし、ゼロ成長の下ではそうならない。

 もちろん、老朽化した設備を建て替えるための設備投資は行われるが、その分の資金は減価償却で賄われてしまうので、銀行借り入れにはつながらないのである。