「企画プレゼンが通らない」「営業先の反応が弱い」「プレゼン資料の作成に時間がかかる…」など、プレゼンに関する悩みは尽きません。そんなビジネスパーソンの悩みに応えて、累計25万部を突破した『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』シリーズの最新刊『プレゼン資料のデザイン図鑑』が発売になりました。この連載では、同書のコンテンツを紹介しながら、著者・前田鎌利氏がソフトバンク在籍時に孫正義社長から何度も「一発OK」を勝ち取り、ソフトバンク、ヤフーをはじめ約600社に採用された「最強のプレゼン資料作成術」のエッセンスをお伝えします。

一流のプレゼン資料は、<br />「1枚のスライド」で「1つのこと」しか伝えない

 早速ですが、この約40秒の動画をご覧ください(お急ぎの方は、この動画だけご覧いただいてもポイントを把握いただけます)。

 いかがでしょうか?

 改めて、ビフォー・スライドを見てみましょう。

一流のプレゼン資料は、<br />「1枚のスライド」で「1つのこと」しか伝えない

 これは、クライアントのバナー広告からのアクセス数が低迷していること、その原因が「サイト改装の複雑化」「コンテンツ不足」にあることを指摘するスライドです。しかし、情報量が多く、細かい文字がゴチャゴチャと並んだ、非常にわかりにくいスライドになっています。これでは、クライアントの反応も薄いものになりかねません。

 プレゼン資料をつくるうえで重要なのは、1枚のスライドに情報を詰め込みすぎないことです。情報量が減れば、その分、文字のフォント・サイズも大きくすることができます。その結果、すっきりとわかりやすいスライドにすることができるのです。

 そこで、覚えておいていただきたいのが「1スライド=1メッセージ」という鉄則です。1枚のスライドに複数のテーマに関する情報を載せるのではなく、1メッセージに限ることによって、確実にわかりやすいプレゼン資料にすることができるのです。

 では、改めてビフォー・スライドを見てみましょう。このスライドには、3つのテーマが混在していることがわかります。

一流のプレゼン資料は、<br />「1枚のスライド」で「1つのこと」しか伝えない

 (1)はクライアントの課題を指摘するのがテーマです。「広告バナーからのアクセスが少ない」こと、「サイト階層の複雑化」「コンテンツ不足」が原因であることを指摘しているわけです。

 (2)は「広告バナーコンバージョン率が0.25%」と低迷していることを示したうえで、「デザイン一新が必要」と提案している部分です。

 そして、(3)は、クライアントの参考にしてもらうために、サイト階層のデザイン事例を紹介している部分です。

 このように、3つのテーマが混在しているために、このスライドはゴチャゴチャしてわかりにくいものになっているわけです。そこで、3つのテーマごとに1枚のスライドに切り分けるとともに、よりわかりやすく加工していきましょう。

 まず、(1)の部分は、次のスライドのように、文字量をグッと絞りこんだうえで、「アクセス低下」「複雑化」「不足」というネガティブ表現の部分を赤字にすることで、クライアントの危機感に訴えるといいでしょう。文字量を減らすことで、フォントを50ptにすることができますので、視認性が格段に上がっていることがお分かりいただけると思います(ビフォー・スライドのフォントは28pt)。

一流のプレゼン資料は、<br />「1枚のスライド」で「1つのこと」しか伝えない

 (2)の部分は、「広告バナーコンバージョン率が0.25%」と低迷していることを強く印象づけるために、次のスライドのように過去4ヵ月の「コンバージョン率の推移」を折れ線グラフで示すと効果的でしょう。そして、「4ヵ月連続目標未達」「デザイン一新必須」と大きなフォントで強調することで、メッセージを印象づけることができます。

一流のプレゼン資料は、<br />「1枚のスライド」で「1つのこと」しか伝えない

 最後に、(3)は補足的な内容なので、本編スライドからははずして、アペンディックスとして用意しておくといいでしょう。本編スライドは本質的な要素だけで構成し、補足的な要素はアペンディックスに回すことによって、シンプル&ロジカルなプレゼン資料をつくることができます。なお、このアペンディックスでは、「サイト階層のデザイン」を伝えることが主眼ですから、次のスライドのように図版化するとよいでしょう。

一流のプレゼン資料は、<br />「1枚のスライド」で「1つのこと」しか伝えない

 いかがでしょうか?

「1スライド=1メッセージ」にすることで、1枚のスライドに盛り込む情報量を絞りこむことで、フォントを大きくしたり、グラフや図版を掲載する余地を生み出すことができることがおわかりいただけたと思います。

 プレゼン資料は、見た瞬間に「ピン!」とくる、わかりやすさが非常に重要です。もしプレゼン資料が複雑なものになっているならば、ぜひ、「1スライド=1メッセージ」を念頭において、1枚1枚のスライドを整理してみてください。クライアントの反応が変わることを実感するはずです。

一流のプレゼン資料は、<br />「1枚のスライド」で「1つのこと」しか伝えない
前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、光通信に就職。「飛び込み営業」の経験を積む。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。営業プレゼンはもちろん、代理店向け営業方針説明会、経営戦略部門において中長期計画の策定、渉外部門にて意見書の作成など幅広く担当する。
2010年にソフトバンクグループの後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、事業プレゼンで第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして数多くの事業提案を承認されたほか、孫社長が行うプレゼン資料の作成も多数担当した。ソフトバンク子会社の社外取締役や、ソフトバンク社内認定講師(プレゼンテーション)として活躍したのち、2013年12月にソフトバンクを退社。独立後、『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』(ダイヤモンド社)を刊行して、ビジネス・プレゼンの定番書としてベストセラーとなる。
ソフトバンク、ヤフーをはじめとする通信各社、株式会社ベネッセコーポレーションなどの教育関係企業・団体のほか、鉄道事業社、総合商社、自動車メーカー、飲料メーカー、医療研究・開発・製造会社など、多方面にわたり年間200社を超える企業においてプレゼン研修・講演、資料作成、コンサルティングなどを行う。